米中対立が車載半導体に飛び火し、自動車の生産が再び不安定化する懸念が高まっている。オランダにある中国系半導体メーカー、ネクスペリアが中国に持つ拠点からの半導体出荷が停止しているためだ。フォルクスワーゲン(VW)グループやBMW、ホンダ、フォード・モーターなどで車載半導体の不足が懸念される事態になった。


  車載半導体の供給懸念が浮上(イメージ)

 ネクスペリアはもともと、フィリップスグループのオランダ企業だったが、今は中国資本で、主に旧世代の車載半導体を中国工場で製造している。世界中の主要な自動車メーカーと取引がある。

 米国政府が安全保障や外交政策上の観点から企業の輸出管理規制を強化し、輸出規制対象を広げる一環としてネクスペリアも加えると発表。これを受けてオランダ政府は「ネクスペリアが安全保障に関係する半導体製造技術を中国に移転する可能性がある」として同国法令に基づき同社を管理下に置いた。

 この措置に中国当局が反発し、ネクスペリアの中国子会社に対して車載半導体の一部についての輸出禁止を指示。このため、同社中国工場から海外の自動車メーカーへの車載半導体の出荷が止まった。

 このため、ネクスペリアの車載半導体を採用している自動車メーカーの生産に影響が及ぶ可能性が高まっている。VWグループが今週にも自動車生産ラインの一部を停止するとの報道もある。自動車メーカー各社は車載半導体の在庫の確認や、代替調達の検討に入っている。

 コロナ禍では車載半導体需給が崩れ、長期間にわたり車載半導体が不足し、世界中の自動車生産に影響が出た。今回は、米中対立が安定生産のリスクになっている。今回の件以外でも、中国政府が電動車などに必要なレアアース(希土類)の輸出規制を強化した影響で、フォードやスズキなどで自動車生産が一時停止に追い込まれた。

 レアアースについてはその後、中国当局が輸出規制を緩和し、自動車生産は正常化したものの、米国との貿易摩擦の激化に伴い、再び輸出規制が強化されるなど、不透明な状況が続いている。米中対立によって自動車のサプライチェーン(供給網)は不安定化を余儀なくされている。