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2025年10月10日

国内メーカー、EV市場開拓を本格化 トヨタbZ4X/日産リーフ HV並みの航続距離と価格を実現

国内の自動車メーカーが電気自動車(EV)に本腰を入れ始めた。トヨタ自動車の「bZ4X」や日産自動車の「リーフ」が航続距離を700㌔㍍超と大幅に延ばしつつ、車両価格を引き下げた。多くのユーザーにとって、EVの航続距離の短さと車両価格の高さは購入の障壁となっていたが、両車は同クラスのハイブリッド車(HV)並みの航続距離と価格を実現した格好だ。国内のEVシェアは2%程度にとどまるが、HVとそん色ない性能を実現したEVは国内市場に風穴を開けられるか。

トヨタは9日、bZ4Xを一部改良して発売したと発表した。電池容量を従来の71.4㌔㍗時から74.7㌔㍗時に引き上げ、満充電時の航続距離は746㌔㍍(WLTCモード)と、約200㌔㍍も延ばした。一方、価格は前輪駆動モデルで550万円(消費税込み)と従来モデルより50万円安い。

 航続距離の引き上げは電池容量の拡大だけでなく、エネルギー損失を減らす技術を積み上げた結果でもある。電動駆動ユニットのeアクスルは、従来比でエネルギー損失を約40%削減し、電費を大幅に改善した。

 さらに今回の一部改良では、電池容量を57.7㌔㍗時と減らしながら、航続距離は従来モデル並みの544㌔㍍(同)を確保した量販グレードを設定。価格は従来モデルよりも70万円安い480万円(前輪駆動)とし、国のクリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)の90万円を差し引くと300万円台で購入が可能となる。

 トヨタが一部改良で基本性能をここまで引き上げるのは珍しい。フルモデルチェンジ並みの商品のテコ入れを図った背景には、EV販売の苦戦がある。bZ4Xはトヨタ初のEV専用モデルとして2022年に投入したが、24年の国内販売実績は1千台程度にとどまる。今回の改良ではEV販売の障壁となっていた価格の引き下げと航続距離の改善に加えて、トヨタ純正普通充電器の設置補助を行うなどインフラ面の不安を解消し、EVユーザーのすそ野を広げる狙いだ。

 8年ぶりにリーフを全面改良した日産も、大幅に延ばした航続距離と戦略的な価格設定でEV市場の開拓を狙う。10年に初代モデルを投入以来、国内の累計販売台数は18万台と他メーカーに比べてEVの保有母体は大きいが、日本マーケティング本部の寺西章チーフマーケティングマネージャーは「(国内EVシェアの)2%を取り合うだけでは世界が広がらない。HVユーザーの流入を狙う」と、新規顧客開拓に意欲を示す。

 日産は15年前に初代リーフを投入してから、長らく競合車種が存在しない状況が続いたが、トヨタをはじめスズキも「eビターラ」でEV市場に参入し、ホンダも軽自動車「N─ONE e:」(エヌワンイー)を投入。テスラやBYDなど輸入車勢も攻勢を強める中で「EV市場が盛り上がる」(杉本全執行職)とみる。従来のハッチバックからクロスオーバーSUVへと車型も変化させた新型リーフで、HVの〝大衆化〟を実現した「トヨタ『プリウス』のようなEVを目指す」(寺西チーフマーケティングマネージャー)という。

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞10月10日掲載