2025年10月1日
国交省、EV電池の熱連鎖火災 乗員保護へ保安基準改正 2027年9月から適用
国土交通省は、電気自動車(EV)などの車載電池が異常発熱した際に乗員の安全を確保することを狙いに、道路運送車両の保安基準などを改正する。新型車は2027年9月から適用する。海外ではリチウムイオン電池内の一部のセル(単電池)が熱暴走を起こし、他のセルに伝播して燃え広がっていく「熱連鎖」が原因の火災が増えており、EVの安全性を高める。
今年3月に、国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)において、電池火災を抑制し、乗員を保護するための試験法が追加された。9月の発効を踏まえ、保安基準を改正する。
具体的には、電池の陽極と陰極を隔てるセパレーターにレーザーを照射し、強制的に短絡(ショート)させる。その際、他のセルに異常発熱が広がる熱連鎖の防止と、異常発熱を検知した際に運転手に対して警告を出し、5分間は火災や爆発が起きないことを求める。追加試験の適用日は、新型車は27年9月から、継続生産車は30年9月からとする。レーザーを用いる試験方法は日本が提案した。
米国の自動車保険比較サイトが米国家運輸安全委員会(NTSB)や運輸統計局(BTS)などのデータをもとに調査したところ、販売10万台当たりの火災発生件数は、EVが25件だったのに対し、ハイブリッド車(HV)が3474件、内燃機関車が1529件となった。件数で見るとEVはHVや内燃機関車よりも火災の発生件数は少ない。
ただ、24年3月には英ロンドンで比亜迪(BYD)製の電池を搭載したEVバスが火災を起こし、約2千台がリコール(回収・無償修理)されたほか、昨夏には韓国でバッテリーからの出火が原因でテスラ車が燃える事故も起きた。国交省の担当者によると、熱連鎖が原因のEV火災は、「国内では現時点では確認されていない」と話す一方で、中国や韓国、米国などで起きたEV火災では「原因が熱連鎖であると念頭に置くケースも出てきている」と語った。
日本は、車載電池の安全基準として「車両衝突時の衝撃に対する保護」「車外からの火災に対する保護」「被水時における保護」などをすでに規定している。
対象者 | 一般,自動車業界 |
---|
日刊自動車新聞 10月1日掲載