2025年9月25日
〈キーパーソンに聞く〉自工会モビリティショー委員会、貝原典也委員長 「少し先の未来」に焦点
日本自動車工業会(自工会、片山正則会長)主催の「ジャパンモビリティショー2025」が10月30日に開幕する。約70年続いた「東京モーターショー」から2023年に名称を変更し、自動車以外の産業も参加してモビリティの未来を表現するイベントへと衣替えした。右肩下がりだった来場者数は100万人超に回復した。ただ、モビリティの「テーマパーク化」がメインのイベントとなり、クルマ好きが置き去りにされたとの指摘も出た。自工会モビリティショー委員会の貝原典也委員長は、旧来のクルマファンにも焦点を当てたことが今回展の変化点だと強調する。
他産業やスタートアップなど480社・団体以上が出展する。出展者数は過去最大規模となる見通しだ。ただ、前回展では「クルマそのものの魅力にもっと触れたい」と言う声が挙がっていた。
「前回はモビリティの未来をテーマとし、2050年と少し先の未来にフォーカスを当てた。未来の暮らしや生活を感じてもらい、体験してもらう展示だった。今回は10年後くらいの比較的近い将来にフォーカスする。過去から現在、現在から未来と、どのように発展してきたかを体感いただき、近い将来を想像いただける内容とする。特に、『カルチャー』ゾーンでは、今まで日本で育ってきたモビリティ文化を展示し理解してもらった上で、未来を想像できるような内容に仕上げる」
映画や漫画の影響で日本車の一部車種は海外でも熱狂的な人気だ。日本車の歴史も「カルチャー」として語る必要が出てきている。
「年齢とともに、車だけではなく社会環境が変わり、モビリティも進化している。例えば自動車が普及し始めた当時はモータースポーツがなく、あくまでも人々の生活の足でぜいたく品だった。生活になじみ始めると個性を表現したり、時代を反映するものに変化してきた。世代を反映したポップカルチャーのようなものが、車のデザインにも反映された。内装を見てもずいぶんと変わったと感じると思う」
東京モーターショーの来場者が減る一方、コアなクルマ好きに向けた「東京オートサロン」は堅調に来場者が伸びてきた。「クルマ離れ」と言われて久しいが、オートサロンの賑わいを見ると、クルマ好きの「モーターショー離れ」が起こっていた可能性もある。
「世界のさまざまなモーターショーを見てきたが、展示車両は今販売している車が多く、カルチャーで展示するような車両はない。今回のモビショーは相当ユニークだと思う。一方で、ヒストリックカーのイベントである米カリフォルニア州での『モントレー・カー・ウィーク』や、英国の『グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード』はコアなファンが毎年参加するイベントだ。今回のモビショーはこれらのイベントのような感覚も入っているのではないか。(カルチャーゾーンは)古い車やモビリティの歴史を感じられる。1950年、60年代から2000年代くらいまで約30台の二輪車や四輪車が並ぶ予定だ。時代の変遷も見られるし、車ファンも懐かしさを感じてもらえる」
前回の主催者企画「フューチャーツアー」はテーマパークのようなつくり込みでクルマファン以外も魅了した。
「今回はおよそ10年後の未来。生活の変化や転換を見ていただけるものを企画している。『未来はこんな感じで来るのだな』というより、『未来は自分たちでつくっていくんだ』というイメージを持ってもらえる機会にしたい。生活空間が変わることに対して、モビリティが共存・共生していくことを感じてもらえる」
前回ショーでは多くのスタートアップが参加し、会場ではビジネスマッチングが活発に行われた。「モビリティ産業」が広がりつつある。
「前回から(スタートアップとの共創を)継続してきた中で言うと、1千件以上のマッチングが生まれている。今回、展示などの構成は前回同様でスタートアップがブース出展し、ピッチコンテストをしてもらう。今回は大学や研究機関にも参加していただいており、23年よりも参加者が広がっている。23年に(ピッチコンテストで)受賞した企業に成果やこれまでの活動などを発表し共有してもらえる。自動車メーカーもスタートアップとの接点は常に探しており、社内ベンチャーなど各社さまざまな取り組みもしている。モビショーのような場で活動が広がることは、自動車会社としてはウェルカムだ。個社の利益だけではなく産業的に発展してくとうれしい。モビショーがモビリティ産業だけではなく、幅広い産業の発展につながるという意味でより有意義なものになると思う」
前回ショーで好評だった、自動車メーカートップや各方面の専門家などが参加するトークイベントも開催する。今回はクルマ好き向きのテーマも用意する。
「今回は自工会の正副会長が一堂に会し、それぞれが車に関して熱く語るプログラムを用意する。有識者などとのトークセッションには理事が参加する予定だ」
今回のキャッチフレ―ズは「いくっしょ、モビショー!」。略称はこれまでの「JMS」から「モビショー」に変える。
「イメージが湧きやすく、シンプルだ。各自動車メーカーのテレビCMにも『いくっしょ、モビショー!』を入れてもらうことになる。皆さんにもぜひモビショーと呼んでいただきたい」
(編集委員・福井 友則、藤原 稔里)
「過去から未来へとどのようにモビリティが発展して
きたかを体感できる」と語る貝原典也(かいはら・
のりや)モビリティショー委員会委員長(ホンダ副社長)
「いくっしょ、モビショー!」のフレーズで幅広い
世代への周知を図る(写真は前回展)
対象者 | 自動車業界 |
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日刊自動車新聞9月25日掲載