一般社団法人 日本自動車会議所

会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2025年9月8日

〈日米関税交渉〉大統領令署名も部品業界に残る不透明感 どうなるUSMCA 政策動向なお注視

 関税交渉を踏まえた日米合意を履行する大統領令にトランプ米大統領が署名した。自動車部品業界からも、ひとまず安堵(あんど)の声が広がっている。ただ、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)など、扱いが不透明な部分も残る。中長期の投資をどう判断するか、悩ましい局面が続きそうだ。一方で「内燃機関関連の生産の現地化は慎重な判断が必要だ」(メガサプライヤー幹部)との声もある。

 
  内燃機関部品などの米国生産は悩ましいという(イメージ)

 「かねて影響を注視しているが、まずは一安心できる」。マーレジャパン(東京都豊島区)の木下靖博社長は、こう受け止める。別のサプライヤー幹部も「市場も、動きを好感するのではないか」と期待する。「ひとまずホッとしている」(サプライヤー幹部)と安堵の声が業界に広がる。一方で「関税による米国内の消費低迷など間接的な影響も含めて今後も政策動向を注視していく必要がある」(別のサプライヤー)との声もある。

 ただ、USMCAの扱いや、合意後の進ちょくなどをめぐる日米再交渉の可能性も伝えられるなど、流動的な部分も多く残る。「メキシコで生産される品は、USMCAで9月まで関税免除の方針となっているが、今後について注視している」(大手サプライヤー幹部)と不安が残されてもいる。木下社長も「グループでもカナダ、メキシコで多数の工場を抱える。状況を見守っていきたい」と、警戒を解かない。また、あるサプライヤーは「GM(ゼネラル・モーターズ)などもメキシコで生産している。USMCAを見直すことは自国の首を絞めることになるのでは」とも指摘した。

 あるメガサプライヤー幹部は「15%でも十分高く、大きい数字であることは間違いない。利益や商品性に影響することは明らかだ」と話す。さらに「米側が言う80兆円の対米投資の中に、自動車メーカーの現地化投資が含まれるとすれば、トランプ政権の言う『ガソリンをもっと掘り、CO2(二酸化炭素)をまき散らす』といった方針に追従させられ、近い未来には使えなくなるものへの投資になる可能性がある」とも危惧する。

 中国系メーカーは米国以外に足場を築き、ソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)化や電気自動車(EV)化を進めている。前出のサプライヤー幹部は「この流れはASEAN(東南アジア諸国連合)や欧州にも波及する」と見立てた上で、「米国が今の政策を続ければ、トランプ政権が終わった時に、また急転換を余儀なくされる可能性もある」と指摘。「80兆円に含まれる投資が、日本の自動車メーカーの内燃機関ベースの現地化にならないといいが…」と漏らした。

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞9月8日掲載