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2025年7月9日

進む充電器の高出力化、充電各社が2025年内に240kW・350kWへ機器更新 コスト上昇の課題も

 最高出力150㌔㍗を超える急速充電器の設置が間もなく始まる。パワーエックス(伊藤正裕社長、岡山県玉野市)は、今秋にも設置済みの急速充電器で240㌔㍗に高めるソフトウエアのアップデートを開始する。eモビリティパワー(幸加木英晃社長、東京都港区)も今年後半から、350㌔㍗の充電器の設置を始める予定だ。高出力化には、コスト上昇の課題もある。しかし、海外と比べて日本のEV普及が進んでいないのは、制度上の課題で充電性能を低く抑えざるを得なかったことも一因だ。今後、充電の受け入れ性能を制限していたメーカー側の対応が注目される。

 これまで、日本では事実上、急速充電器の最高出力の上限が150㌔㍗だった。電気事業法の省令で定める「電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)」で充電設備の対地電圧を450㌾以下と規定していたことが理由だ。低電圧で出力を高めるには大電流が必要だが、電流を増やすと電気抵抗を下げるためにケーブルを太くする必要がある。ただ、取り回しが難しくなり、充電時の利便性が低下するといった課題が生じる。このため、150㌔㍗以上の充電器を実用化しにくかった。

 一方、海外では高出力化が加速しているのを受け、政府は昨年10月、電技解釈に1500㌾以下の充電設備を対象とした保安要件を追加した。これにより、高出力の充電器を設置しやすい環境が整った。これに、充電サービス各社が反応した。

 パワーエックスは、現在150㌔㍗に制限している充電性能を高める。一部周辺機器の取り替えは必要だが、充電器本体は240㌔㍗に対応済みで、追加費用の発生は最小限にとどめられるという。ソフトの更新は高出力のニーズが見込める充電スポットから段階的に進める考えだ。

 eモビリティパワーは、東光高岳製の350㌔㍗の充電器を今秋から高速道路のサービスエリアなどに段階的に設置する。走行400㌔㍍程度に相当する電力量を10分で充電できるという。

 もっとも、240㌔㍗や350㌔㍗といった超高出力充電の普及ペースは読みにくい。現状、150㌔㍗以上の充電に対応している車両はヒョンデ「アイオニック5」など一部にとどまるためだ。海外メーカーのEVには電池電圧800㌾を採用し、高出力充電が受け入れられる車種が少なくない。しかし、日本向けの車両は充電インフラの環境を踏まえ、150㌔㍗以下に制限しているのが実情。充電器側の出力が高まっても、これに対応する車両が増えなければ、投資の費用対効果が見込めない。

 一般的に充電器の高出力化は、インフラの導入・維持コストの上昇につながる。高圧化に伴ってキュービクル(受電設備)の増設が必要になるとともに、低圧契約と比べて電気代の基本料金も高くなるからだ。パワーエックスの場合、系統からの電力を蓄電池に低圧で充電し、その電力を車両に充電するため、高圧化に伴うコストは発生しない。とはいえ、低出力の充電器と比べるとコストは上昇する。家庭での基礎充電を軸に、中間出力の充電器や超高出力充電器をどのようバランスさせていくか、車両の進化の状況も踏まえて模索する状況が続きそうだ。

パワーエックスは高出力充電の需要のあるスポットから順次アップデート(千葉県のハイウェイオアシスに設置した充電器)

eモビリティパワーは東光高岳製の350㌔㍗の充電器を今秋から高速道のサービスエリアなどに設置

対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞 7月9日掲載