2025年7月2日
損保協、会長に三井住友海上社長の舩曵真一郎氏 信頼回復と災害対応を強化
日本損害保険協会(損保協)の会長に、三井住友海上火災保険の舩曵真一郎社長(65)が30日付で就任した。初の記者会見で舩曵氏は、保険金の不正請求問題など一連の不祥事における「顧客と社会からの信頼回復」と「自然災害対応の強化」に力を入れる方針を明らかにした。また、顧客本位の最適な自動車保険の在り方について、損害保険会社が整備事業者との対話を従来に増して重ねる必要があるとの考えも示した。
今期の最優先課題は信頼回復で、不正事案の再発防止を徹底することが大前提となる。適切な保険募集の在り方を再構築するためには、損保協が2024年度に策定した「『代理店業務品質評価制度』の実効性をいかに高めるかが、最も大切なこととなる」とした。
保険代理店が主体的・継続的に課題の発見と改善に取り組める環境整備の一環として、損保協は業界共通の評価基準に沿った新たな「自己点検チェックシート」を作成し、26年度から本格運用を予定する。点検後に損保会社との対話を通じて改善策の策定・実施や顧客本位の業務運営の徹底につなげてもらうのが狙い。25年度はトライアル期間だが、自己点検チェックシートの活用に取り組んで、業界全体の業務品質の向上につなげる。
今後、改正が予定される比較推奨販売などに関する法令や保険会社向けの監督指針を踏まえ、業界団体としての対応の検討を加速する。「比較推奨販売が円滑、適切、効率的に行われるための方法論を考えることが、実施に向けて一番準備をしておかなければならない」と述べた。
今後の自動車保険の在り方を考える上で、損保会社と整備事業者との対話の重要性も強調した。これまで損保各社は主に自動車保険の支払い部門が整備事業者と対話を行ってきたが、今後は整備事業者の存在価値や将来性などを総合的に理解、評価するための対話が損保会社に必要とした。
損保協の会長あるいは三井住友海上の社長どちらの立場とするかは今後検討すると前置きした上で、「日本自動車整備振興会連合会(日整連)を訪問し、整備事業者の経営や自動車保険に関する課題を共有したい」とも話した。両業界で共有認識した課題の解決に向けて方向性と具体策の検討につなげる。
損保会社と企業におけるリスクマネジメント(危機管理)の意識向上に向けて「スピード感をもって取り組む」との考えも示した。具体的にはリスクマネージャー育成のための資格制度の創設を検討する。
舩曵 真一郎氏(ふなびき・しんいちろう) 1983年神戸大学経営学部卒、住友海上火災保険(現三井住友海上火災保険)入社。2017年4月MS&ADインシュアランスグループホールディングス執行役員。21年4月三井住友海上火災保険社長。24年6月MS&AD HD社長。1960年5月生まれ。東京都出身。
日刊自動車新聞 7月2日掲載