2025年6月18日
日米関税交渉、合意至らず とまどう日本の自動車業界 米国での価格戦略に注目
日本の自動車業界が日米関税交渉の行方に気を揉んでいる。6月末には追加関税の適用前に米国に輸出した在庫がほぼ底をつく見通しだが、最終的な関税率が見通せず、完成車メーカーは対応を決めかねている。部品メーカーも「取引先によって対応が異なる」と困惑顔だ。今後の注目点はまず、米国での価格戦略になりそうだ。
国内の自動車メーカーと幅広く取引するある部品メーカー。米国に直接輸出した部品の一部が追加関税の対象となった。この分を納入先の自動車メーカーから請求されたが、追って同額を還付されたという。ただ、今のところは完成車メーカーによって対応が異なるようだ。日系の完成車メーカーから、部品の追加関税分の半分を負担するよう求められた部品メーカーの幹部は「とても応じられない」と話す。一方、別の部品メーカーは「非日系の完成車メーカーからは追加関税分、全額の価格転嫁を認めてもらえた」と語る。
部品メーカーが注視するのが米国での新車価格だ。自動車メーカー各社は、追加関税がかかる前に駆け込みで輸出を増やしたものの「6月中には追加関税適用前に陸揚げした自動車や部品の在庫がほぼ尽きる」(関係筋)とみられる。欧米勢の一部はすでに値上げに踏み切ったが、日系の多くは様子見だ。日米交渉が決着していないことに加え「新車価格に追加関税分をいち早く転嫁し、トランプ大統領に批判されるのを恐れている」(日系サプライヤー)ことや「値上げで米国市場が冷え込むのを懸念している」(同)などと指摘される。
新車の値上げが進めば、自動車メーカーとの価格交渉もスムーズに進むと部品メーカーではみているものの、先行きは決して楽観視できない。米政府は、3月から25%の追加関税を課していた鉄鋼・アルミについて50%に引き上げた。材料だけでなく、鉄やアルミを使用する対米輸出の部品の関税も大幅に引き上げられ、機械系部品メーカーは「取引先が価格転嫁してくれないと、今の円安ドル高水準であっても採算が合わない」と漏らす。
4月17日に日米関税交渉がスタートしてから2カ月。着地点はまだ見えない。
対象者 | 一般,自動車業界 |
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日刊自動車新聞 6月18日掲載