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自動車産業インフォメーション

2025年6月3日

〈本紙緊急アンケート〉国内部品メーカー、トランプ関税で8割超に直接的影響 政府には全方位で対応を

 〝トランプ関税〟による追加コストや新車需要の減速に自動車部品メーカーが懸念を深めている。日刊自動車新聞の緊急アンケートによると、回答企業の83.6%が事業に「直接的な影響が及ぶ」と回答した。税率上昇に伴う追加コストについては、65.3%が「顧客(自動車メーカー)に負担の按分(あんぶん)を要請する」と答えた。中小・小規模(零細)企業を含めたサプライチェーン(供給網)の維持へ、官民で対処する必要がありそうだ。

自動車部品メーカーを対象にアンケートを実施し、5月末までに49社の回答を得た。回答企業のうち、第三者経由も含め、米国へ製品を輸出している企業は46社(自動車部品以外も含む)。その大半が「トランプ関税の直接影響を受ける」との見方を示した。直接的な影響以外にも「消費マインドの低下」「米国生産への回帰による人件費・材料費高騰などの収益影響」などが懸念点として挙がった。

 自動車部品をめぐっては、内燃機関や内外装など多くの品目に対し、5月3日から25%の追加課税が発動されている。早ければ6月中にも影響が出始めるとみられる中、各社が警戒するのがコスト負担だ。アンケートでは、回答企業の約3割が負担の按分について「未定」とした一方、6割強は「顧客(自動車メーカー)にも負担を要請する」との意向を示した。

 今のところ関税がどこでどう着地するかは見通せない。ただ、関税が長引けば調達や生産体制の見直しも視野に入ってくる。アンケートでは、米国生産の拡大や米国への生産移転について、半数以上が「未定」とした一方「顧客の要望に応じて対応を進める」「より関税率の低い生産地への移管を検討する」といった声もあった。

 日本自動車工業会の片山正則会長は「(メーカーとサプライヤーは)『運命共同体』だと思っているので、どちらかへのシワ寄せではなく、共存共栄の形で、もう少し具体的になれば、今回の関税に限らず、双方での知恵出しや生産性向上に向けて考えていくと思う」と定例会見で語った。

 一方で、政府の相談窓口には「自動車内装資材の受注が15%程度、減少した」「7月以降は2割の部品減産要請があった」などの声が寄せられる。たとえ関税分を持ってもらったとしても、発注量が減れば同じことだ。

 政府は「米国関税措置を受けた緊急対応パッケージ」として、5方針を打ち出し、具体化を急いでいる。どの施策を優先すべきか尋ねたところ(複数選択可)、「産業構造の転換と競争力強化」がトップとなり、「資金繰りをはじめとした支援強化」「国内消費喚起策の強化と国民の暮らしの下支え」と続いた。

 自動車産業の動向は経済や雇用に直結するだけに、政府には中長期での産業育成、短期的な資金繰り支援、消費喚起と、全方位での対応が求められそうだ。

日刊自動車新聞6月3日掲載