2025年6月02日
経産省、「モビリティDX戦略」見直し AI自動運転を協調領域に
経済産業省は、昨年5月に公表した「モビリティDX(デジタル・トランスフォーメーション)戦略」を見直す。公表からまだ1年だが、電動化とともに知能化の開発競争が激化し、機動的に政策を見直す必要があると判断した。改訂案では、人工知能(AI)を用いた自動運転を協調領域として業界の連携を促すほか、タクシーに続き、レベル4(特定条件下での完全自動運転)トラックの一般道実証を2026年度以降に実施する。
レベル4トラックを一般道でも実証していく(いすゞの実証車両)
モビリティDX戦略は、車の知能化時代でも日本の自動車産業が高い国際競争力を保つことを狙いに官民で研究開発や標準化などを進めるための施策をまとめたもの。ソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)の世界市場で、日本勢としてシェア3割を目指す数値目標も掲げている。
改訂案では、自動運転をアルゴリズム(計算手順)で規定する「ルールベース」に加え、認知・判断・操作をすべてAIに任せる「「エンド・トゥ・エンド(E2E)」技術が台頭していることを踏まえ、自動運転のAI領域で自動車メーカー同士の連携を促す。協調領域として、自由にデータにアクセスができる「オープンデータセット」の構築や計算資源の確保、業界共通ルールの策定などを想定する。AI基盤構築に向けた補助金制度の創設なども視野に入れる。自動車メーカーのほか、関連する技術を持つサプライヤーや大学などを交えて方向性を検討し、今夏までに一定の方向性を打ち出す。
また、26年6月以降をめどに、自動運転車両の認証・認可に必要な安全性評価手法においてシミュレーション技術を用いる議論も本格的に始める。現行制度では手続きが複雑で時間がかかっている。量産化を見据え、正確かつ迅速に対応できる制度を目指す。
レベル4の自動運転トラックは現在、高速道路上で実証を行っている。26年度以降はインターチェンジと物流施設間の一般道でも実証を行う。また、自動運転技術を政府や自治体の公用車にも導入していく。今秋には経産省でも実証を始める予定だ。
今後は、車載用でアナログデバイスやセンサーといった「レガシー半導体」の重要性が増すとみており、安定供給の確保などにも取り組む。今夏ごろまでにサプライチェ―ン(供給網)全体での課題を洗い出し、具体的な取り組みや支援策をまとめる。
このほか、SDV人材の育成方針の体系化や、日本におけるライフサイクルアセスメント(LCA)のユースケースの海外展開などの戦略も検討する。
対象者 | 自動車業界 |
---|
日刊自動車新聞6月2日掲載