2025年5月8日
自動車部品の25%追加関税、サプライヤー各社が対応策探る
トランプ米政権が打ち出していた自動車部品に対する25%の追加関税が正式に発動された。対象は200品目以上で、品目追加の可能性も示されている。一方で、日米間の交渉でも状況は変わりそう。先行きが読みづらい中、各社は引き続き、対応策を探っている。
「一連の動きは多くの国にとってウエークアップコール(警鐘)だったと思う」。ルネサスエレクトロニクスの柴田英利社長は米国の関税政策についてこう指摘する。
3日に発動された追加関税では、エンジンや変速機といった基幹部品や電装品など幅広い品目が対象だ。乗用車やSUVを含む小型トラック用なども含まれる。対象部品の拡大も検討することが盛り込まれている。現在は追加関税の対象外である中・大型トラックおよびその部品への課税もあり得る。輸入品について「安全保障上の懸念がある」との名目が立てば、追加関税がかかるようになる可能性が高い。
一方、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の要件を満たす部品については今のところ、課税が免除されているが、いずれは、部品に含まれる非米国産の素材の相当額に25%の関税がかかる仕組みに移るとみられる。3カ国の間で部品を何度も行き来させてきた企業などは、米国産素材の比率を増やすといった対応を求められる可能性がある。
元鉄鋼商社マンで、鉄鋼製品の営業・調達に関するコンサルティングを手掛けるヤマザキ(東京都港区)の山崎耕平社長は、「USMCA域内での付加価値を高めるニーズが強まる」とみる。鍛造を手掛けるゴーシュー(林大輔社長、滋賀県湖南市)の支援もしている山崎社長は「テスラなどに納める中国系のティア1(一次部品メーカー)の多くは、中国から原材料を運んでいたが、関税への対応のため現地調達を進めている。日本勢も供給網の再構築で出遅れると競争に負ける可能性がある」と指摘する。
ただ、あるサプライヤーの幹部は「日本の完成車メーカーなどが米国への投資を積極化させるとしても、投資の中身が課題なだけに、部品業界も慎重な判断が必要だ。今の米国のマーケットではエンジン車やHV(ハイブリッド車)が主体だが、長期的には電動化が進むはず。投資内容を熟慮しないと『負の遺産』を増やしかねない」と懸念する。
ZFジャパン(横浜市中区)の多田直純社長は「関税の価格転嫁が始まると、米国の自動車市場の冷え込みが進み、メーカーが米国以外への輸出を増やす可能性もある。中国勢などは特に、アジアやインドなどで浸透を図るだろう。われわれも、米国ばかりではなくグローバルな動きを注視しないといけない」と話している。
米国産素材の比率を増やす対応が求められる可能性がある(ダイキョーニシカワのメキシコ拠点)
対象者 | 自動車業界 |
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日刊自動車新聞5月8日掲載