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2025年5月7日

サプライヤーや大学、「交通事故ゼロ」の実現に独創技術で挑戦 生体情報も活用

 部品メーカーや大学などが交通事故を減らそうと独創的な技術を開発している。危険なシーンを検知すると、人型のロボットが注意を促したり、音楽や照明を制御することで、ドライバーのストレスを軽減したりといった技術だ。安全性能の向上で、日本の交通事故は発生件数、死傷者とも減っているが、高齢者や若年層の事故率は依然として高い。〝交通事故ゼロ社会〟の実現に向け、新たな発想で挑む。

 住友商事、名古屋大学、シャープ、名大発スタートアップのポットスチル(佐藤太亮代表取締役、名古屋市昭和区)は、同乗者がいると事故率が低くなる〝同乗者効果〟を応用した運転支援技術を開発中だ。名大が開発した「ドライバエージェントシステム」をスマートフォンにアプリとして組み込み、シャープのモバイル型ロボット「ロボホン」と連携。スマホ側のGPS(全地球測位システム)や加速度センサーから一時停止違反や急発進を判断し、安全運転を促す。

 実証プロジェクトリーダーの佐藤彩子氏(住友商事)は「高齢ドライバーの事故を防ぐ方法は免許返納だけではない。高齢者が安全運転を継続できるシステムが必要だ」と話す。2026年度中の商用化を目指す。

 韓国サムスン電子傘下の米ハーマンインターナショナルは、運転者の状態を分析し、事故の予防につなげる人工知能(AI)ベースのプラットフォームを手掛ける。ドライバー・モニタリング・システム(DMS)や、バイタル(生体情報)センシングを盛り込んでいるほか、オーディオやディスプレーの強みを生かしているのが特徴的だ。

 例えば、危険が高まると音声やディスプレーで警告を出したり、運転手がストレスを抱えていると判断すれば、癒やし系の音楽や照明にしてストレス軽減を図ったりする。

 デンソーテン(米本宜司社長、神戸市兵庫区)は、カメラで撮影した顔画像から〝ヒヤリハット〟や居眠りの予兆といった人の内面を推定するAI技術の実用化を目指している。脳波や心拍などの生体情報からわかる人の内面の状態と、表情の変化といった顔の特徴量の関係をAIに学習させ、接触型センサーを用いずに人の感情や眠気を把握できる仕組みだ。

 内閣府によると、高齢ドライバーは年々増え続け、23年は70歳以上の運転免許保有者が全体の16.6%を占めている。事故原因の7割を占めるとされる、不注意や判断ミスといったヒューマンエラーをいかに防ぐかが、安全なクルマ社会のカギとなりそうだ。

 

カテゴリー 交通安全
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞 5月7日掲載