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自動車産業インフォメーション

2025年4月18日

部品メーカー、TOBの動き相次ぐ

日本の自動車部品メーカーに対するTOB(株式公開買付け)の動きが相次いでいる。事業環境が大きく変化する中、TOBで事業領域を広げたり、再編により競争力のさらなる強化を図る狙いだ。経済産業省も「企業買収における行動指針」で、買収提案への検討を促す姿勢を打ち出している。一方で、円安や相対的に安価な時価総額を背景に、海外勢からの買収提案も増加しており、国内産業を守るための対抗策という側面もある。

 部品業界に関わる対照的なTOBが、2件進行している。ニデックと牧野フライス製作所、ミネベアミツミと芝浦電子だ。

 同意なきTOBを発表したのがニデックで、牧野フライスへの提案について驚きの声が上がる。これまでは水面下で折衝したりして融和的な買収を打診する例が日本企業の間では多かったからだ。

 同意なきTOBを進める背景について、ニデックは「M&A業界が活発化している中、公開買付者(ニデック)のみならず、国内もしくは海外の企業が対象者に対して買収提案を行う可能性も否定できない」と、海外勢への警戒を理由としている。

 一方、海外勢からの買収に明確に対抗するのはミネベアミツミだ。台湾企業から同意なきTOB提案を受けた芝浦電子に対してホワイトナイトとなり、友好的TOBを計画する。貝沼由久会長CEO(最高経営責任者)は「海外資本の傘下になることに、芝浦電子の従業員や取引先からも不安が出ている。日本を代表する電子部品メーカーの高度な技術力や産業基盤が流出すると、国益を損なう」と強調した。

 両社の立ち位置は異なるが、TOBを後押しするのが自動車業界の環境変化だ。ニデックは「対象者(牧野フライス)の加工技術をベースとした事業展開との親和性が高いと考える」と説明。電動化でモーターやギアなどの部品に高精度や品質が求められる中、精密加工技術で定評のある牧野フライスを自社の製造プロセスに取り入れたいという狙いがある。同時に、中国市場での競争激化も踏まえ、牧野フライスの技術力やブランド力とシナジーを出し、グローバルでのプレゼンスを高める考え。主な販路が重複しないことも、シナジーへの期待につながる。

 ミネベアミツミも、電動化により「今まで以上に温度管理の重要性が増す。対象者(芝浦電子)のサーミスタの搭載機会、搭載数は大いに増加すると見込む」と説明する。

 2件に限らず部品業界ではTOBが相次いでいる。カヤバは昨年、知多鋼業に対し、完全子会社化を目的としたTOBを実施した。シンニッタンは、日本ものづくり未来投資事業有限責任組合の完全子会社ARTS―3(水谷光太代表、東京都港区)によるTOBに賛同する意向を表明。非上場化しつつ、スタートアップ企業との協業など迅速化を図る狙いだ。

 こうした動きは、政府の方針も背景にある。経産省が出した行動指針で、「敵対的買収」は「同意なき買収」と呼ばれるようになった。真摯な買収提案はしっかりと検討するように促している。そうした後押しが結果的に、従来の融和優先の交渉から、オープンな場でのTOBが活発化する流れにつながっているともいえそうだ。

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞4月18日掲載