2025年4月15日
〈キーパーソンに聞く〉ティアフォー、三好航COO 自動運転サービス 「面」で実装を
自動運転スタートアップのティアフォー(加藤真平社長CEO=最高経営責任者)、東京都品川区)は2030年度にかけて、自動運転サービスを全国300カ所以上で展開することを目指す。政府は今年度をめどに自動運転を全国50カ所、27年度には100カ所に展開する計画だが、同社は、運行エリアを広げて「面」としての普及を図る方針だ。導入までの工程数も従来比で半減することを視野に入れるほか、ルールベースの従来型と人工知能(AI)活用のハイブリッド運行を目指している。同社の三好航COO(最高執行責任者)が講演や取材で展望を語った。
「ルールベースとAIのハイブリッドでできないか」と話す三好氏
「自動運転レベル4(特定条件下における完全自動運転)の実装がこの1年ぐらいで一気に進み始めている。当社は車両提供や、現地での運行設計領域(ODD)適合(チューニング)、認可取得・支援、ソフト更新・メンテを主に担うが、チューニングや地図の作成などはパートナーにスキルを移管しつつあり、多くの箇所でわれわれが現地に行かなくても実装が進む仕組みができつつある。これがこの1年の大きな進ちょくだ」
ティアフォーは15年設立。今では約400人の従業員を抱える企業に育った。同社とは別のNPO(非営利団体)が主体となってオープンソースのソフト「オートウエア」を提供し、同社が把握する限りでも50車種以上、20カ国以上、500社以上が活用している。同社は自動運転の開発支援と、最終製品である自動運転車両の開発を柱にする。
「車両のラインアップも、ラストマイルや需要が高い小型バスのほか、大型バスを開発しており、もうすぐ出せる。小型バスでも、初期バージョンよりクオリティーの高い、いわば〝バージョン2〟を出しており、数十台レベルで生産準備をしている。期間の短縮も課題だ。本当に無人での自動運転サービスを導入するまでには、最初の実証からどうしても3年ぐらいかかってしまう。ただ最近は、1年目からレベル4の認可の準備をするケースも徐々に出てきている。全国に自動運転サービスを導入する上で、3~4年かかっているプロセスを半分ぐらいにしていくのが課題の一つだ」
同社は長野県塩尻市で運転席無人のレベル4自動運転バスを1~2月に運行させた。「公道で、本当に何も制限をかけないオペレーションとして、おそらく初めて」(同氏)の事例という。ただ、課題も見つかった。
「セーフティードライバーがいるのといないのとでは天と地の差がある。短い距離(約2㌔㍍)で小さな一歩だが、安全に運行できたのは自信にもつながる。ただ、予想外だったこともある。車道の中央を逆走してくるような自転車や、交通違反をする人たち、車の挙動を試そうと横断歩道の近くでずっと待つような人たちが見られた。また、郵便配達のように、ドライバーが少し停車してすぐ戻ってくる場合、追い越すかどうかの判断が難しい。工事現場やロータリー、イレギュラーな道路、人間のドライバーと〝お見合い〟になってしまう場合など、引き続き技術やオペレーションで解決していかないといけない」
「こうした対応では、現行のシステムは基本的にルールベース(明確なルールをあらかじめ数多く準備する手法)で、基本的にはすべてのシナリオを考慮して(ソフトの)コードに落とし込んでいるが、AI技術を活用し、とにかくデータを学習させ、得られた結果を生かす技術がトレンドになってきている。ただ、交通ルールやガイドラインをどうAIに順守させるかや、AIの『ブラックボックス』をどう説明するか、学習に必要な大量のデータをどうやって収集・管理するか、サイバーセキュリティーの複雑性が高まる、といった問題がある。当社は既存のルールベースでのシステムと、AIを活用した技術のハイブリッドでできないかと開発を進めている」
さらに、従来の取り組みは「点」にとどまっていることが課題だと指摘し、鉄道沿線なども広域の「面」としての展開を目指す。
「今、何が起きてるかというと、実証や実装が点在している。これをどんどん『面』にしたい。例えば、交通事業者と連携しながら地域を出ていくような形だ。鉄道会社と連携して沿線で自動運転を効率的に展開していく施策などを進め、面で実装できる形で事業を進めていきたい。そのためにも、パートナーや事業者、政府とも連携しながら、進める」
〈プロフィル〉みよし・こう 三菱商事で、海外の大型鉄道建設プロジェクトなど主に都市インフラ案件の事業開発と実行に従事。MBA取得後、ファンドに入社し、投資案件での戦略策定などを主導。20年にティアフォー入社。COOとして業務執行を統括する。
(編集委員・山本 晃一)
日刊自動車新聞4月15日掲載