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2025年4月10日

EU、炭素繊維の規制を検討 廃棄時に人体に悪影響の可能性 素材メーカー各社は状況注視

 欧州連合(EU)が、自動車材料として炭素繊維の使用規制を検討していることが分かった。「廃棄時に人体に悪影響を及ぼす可能性があるため」としている。ただ、実際の規制までには曲折も予想される。日系の素材各社は「個社で対応できることではない。業界団体や関係省庁とも連携して対応を探ることになる」(三菱ケミカルグループ)と状況を注視する方針だ。

 今回、EUが見直しを検討しているのは自動車のリサイクルを規定する「ELV指令」だ。すでに、人体に害を及ぼす可能性がある鉛や水銀、六価クロムなどの自動車部品への含有を禁止しているが、規制対象に炭素繊維を加える方向で検討に入った。破砕時などに出る粉塵に長時間皮膚が触れることで、痛みや炎症が起きる可能性があるためとしている。

 石油由来のポリマーなどを原料とする炭素繊維は、軽くて強度が高いため、スポーツ用品から航空機までさまざまな分野で用いられる。自動車の場合、炭素繊維強化樹脂(CFRP)としてドアやルーフといった外板のほか、一部の機構部品や燃料電池車(FCV)の水素タンクなどに用いられる。東レや帝人、三菱ケミカルなどの日本メーカーが市場シェアの約半分を握る。仮に規制対象となった場合、こうした素材メーカーへの影響は避けられないが、現時点で規制の詳細は公表されていない。燃費や電費の向上に向けて車体の軽量化を目指す自動車業界からの反発も予想され、先行きは不透明だ。


軽くて強度が高いため自動車では外板部品などに用いられる(プリウスPHVのバックドア)

 

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞4月10日掲載