2025年4月10日
武藤経産相、自動車メーカーなどに取引適正化の徹底を要請 トランプ関税懸念が広がる中で
武藤容治経済産業相は8日、国内の自動車メーカーのトップらを呼び、労務費などのコスト上昇分を部品価格に反映させるなど、取引適正化の徹底を求めた。トランプ米政権が輸入車に対する25%の追加関税を発動し、国内自動車産業への影響が懸念されているためだ。政府は中小・小規模(零細)サプライヤーの支援を検討中だが、まずは取引の適正化を徹底することで、中小企業を支援する環境を整える。
会合には、日本自動車工業会(自工会)の片山正則会長(いすゞ自動車会長)をはじめ、トヨタ自動車の佐藤恒治社長、日産自動車のイヴァン・エスピノーサ社長、ホンダの三部敏宏社長などの国内自動車メーカートップや、日本自動車部品工業会(部工会)の茅本隆司会長(ニッパツ会長)らが出席した。
武藤経産相は「米国の関税で厳しい局面にある中、日本の基幹産業で取引の適正化を推進することは、日本の経済を下支えする上でも極めて重要だ」と述べ、取引適正化に向けた対応を求めた。
具体的には、下請法(下請代金支払遅延等防止法)違反に抵触する不適切な取引に関する自主点検や、国会で審議中の改正下請法に加わる新たな規制対象の自主点検、さらに下請法の対象かどうかに関わらず、受注者の利益を損なうような商習慣の見直しなど6項目への対応を要請した。
政府が自動車業界に取引適正化を強く要請するのは、〝トランプ関税〟が「中小規模の部品メーカーにとっては死活問題になるとの声もある」(茅本会長)ためだ。高関税により米国向けの完成車輸出が減れば、国内自動車生産の減少に直結する。また、今後は米国に輸出する自動車部品の一部にも25%の追加関税が課される見通し。部品メーカーが取引先から追加関税分の一部負担を求められる可能性もある。
政府は、国内の自動車サプライチェーン(供給網)を維持するため、中小・零細部品メーカーの資金繰りなどを支援していく方針だ。ただ、自動車業界で下請法違反が昨年から相次いで発覚している現状を踏まえ、部品メーカーを支援する上でも、サプライチェーン全体での取引適正化の徹底が必要と判断した。
武藤経産相は「米国の関税措置で自動車サプライチェーンにも大きな影響が懸念される。中堅・中小部品メーカーに影響が及ばないよう適正な取引を確保する観点からも目配せをお願いしたい」と語った。
自工会の片山会長は取引の適正化に力を入れていく方針を説明した上で「日米の産業発展につながるビジネス環境が維持されるよう関税に関して米国と粘り強く交渉するとともに、サプライチェーンの支援など、日本の基盤を守る支援策の検討をお願いしたい」と語った。
部工会の茅本会長は、トランプ関税が国内の自動車生産や競争力を強化するための原資となる収益確保、労務費を含む価格転嫁を「脅かすものだ」とし、取引の適正化を徹底して賃上げを加速し、日本経済の底上げを図る上でも、米国政府と関税政策についての交渉が重要だとの認識を示した。
政府は、トランプ関税が発動されたことを踏まえ、全閣僚による総合対策本部を設置し、対応や影響を受ける企業への支援策の検討に入る。自動車産業への対策も注目されるところだ。
対象者 | 自動車業界 |
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日刊自動車新聞4月10日掲載