2025年3月17日
EUが行動計画 CO2排出規制を緩和 EV補助金は一元化を検討 自動車産業の競争力強化へ
欧州連合(EU)の欧州委員会は、自動車産業の競争力を高める行動計画をまとめた。企業向けを中心に電気自動車(EV)の購入補助金を拡充しつつ、国ごとに異なる補助金制度の一元化を検討する。一方、EVシフトを狙って厳格化した二酸化炭素(CO2)排出規制は実勢に合わせて緩和する。
EUは性急なEVシフトの失敗を踏まえ、1月末から自動車産業の立て直しへ向けて検討を進めていた。行動計画は①イノベーションとデジタル化②クリーンモビリティ③競争力とサプライチェーン(供給網)の強靭性④技能と社会的側面⑤公平な競争条件の確保―の5分野についてまとめた。
クリーンモビリティでは、企業向けを中心に補助金を拡充する。ベルギーが導入している社用車の税制優遇制など各国の好事例も踏まえて25年末までに制度を設計する。大型車のゼロエミッション車(ZEV)に対する道路使用料免除も延長する。
電池の生産体制づくりも立て直す。18億ユーロ(約2900億円)を投じ、域内で電池を生産する企業の設備投資を支援する。欧州では中国への依存度を下げるため、官民一体で電池の生産能力拡大を進めていたが、ノースボルトが経営破綻するなど、必ずしもうまくいっていない。こうしたことも背景に行動計画では「EUに十分な付加価値をもたらすこと」を条件に、海外企業と連携した欧州企業も補助の対象に加えた。
一方、25年に基準を厳格化したCO2規制は単年ではなく、25~27年の3年間の実績を合算した数値で規制対応を求める。見直し前の規制では、EVの販売低迷を背景に、25年を終えたタイミングから自動車各社は高額な罰金を課せられる見通しだった。
24年の欧州EV販売は前年比1.3%減の199万3102台。18年以降で初めて減少した。EUの政策に呼応し、EV投資を拡大してきた欧州の自動車や部品メーカーではリストラが相次ぐ。
この行動計画を受け、欧州自動車工業会は「より現実的な脱炭素化へのアプローチへの歓迎すべき第一歩だ」とコメントを出した。
対象者 | 一般,自動車業界 |
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日刊自動車新聞 3月17日掲載