2025年2月05日
国土交通省と経済産業省が、船積み中古車の放射線量検査「事実上の廃止」要請
東日本大震災での福島第一原発事故の後、船積みする中古車の放射線量検査が今も続いている問題で、国土交通省と経済産業省が検査の廃止を事実上、求める局長名の文書(周知依頼文)を関係団体に出したことが4日までに分かった。この政府方針を踏まえ、関係する労働組合(労組)がどのような対応をとるのかが今後の焦点になる。
国交省は稲田雅裕・港湾局長名で日本港運協会(日港協)の久保晶三会長あてに、経産省は辻本圭助・福島復興推進グループ長(局長級)、伊吹英明・製造産業局長の両局長名で日本中古車輸出業協同組合(JUMVEA)の佐藤博理事長あてに1月29日付でそれぞれ文書を郵送した。
通知では①公表されている港湾における放射線測定結果からは高線量の中古自動車等が近年確認されていないこと②検査の民事訴訟の東京高裁確定判決(2017年9月)で科学的見地から港湾労働者への健康被害は考えにくく「全ての中古車の放射線検査の必要性は認められない」との趣旨が記されたこと、などから「輸出国等からの放射線検査、放射線検査証明書の添付の要求がある場合を除いては、適切な措置が講じられるよう要請する」として、事実上の廃止を求めた。
それぞれ、傘下の港湾関係者、中古車輸出業者に対して知らせるように求めた。
経産省やJUMVEAによると、輸入時の品質検査項目に放射線量検査が入っている国はアフリカの一部を除き、ほとんどないようだ。JUMVEAによると、いま問題となっている港湾での検査とは全く違う形態で行われているという。
今回、廃止が求められた検査は、日港協と全国港湾労働組合連合会(全国港湾)、全日本港湾運輸労働組合同盟(港湾同盟)が11年8月に「暫定確認書」で合意して始まった。原発事故から時間が経ち、日港協はやめようとしたものの労組との話し合いが難航。事実上さじをなげ、各社の判断に任せた。検査は労組の意向でそのまま現在も続いている。
検査は特定の数団体が行う。検査料は地域によって異なり、1台700~1500円程度とみられる。全国の輸出業者や陸送業者が年間で数十億円を負担している。「法律で決まったことでもないのに、いつまで負担させられるのか」と政府に廃止要求が出ていた。
ただ、労組が納得しないまま検査を廃止した場合、労組の指示で港湾労働者が車の荷積み作業を拒否する可能性もあったため、進展がなかった。
今回の政府の措置は特定の法律を根拠に行われたものではなく、24年3月に閣議決定した、東日本大震災からの「復興の基本方針」の中にある風評払拭(ふっしょく)に向けて政府一体となって取り組むこと、に沿って実施されたものだという。今回の局長名による文書の法的拘束力については曖昧(あいまい)で、労組がどう対応するかが焦点になる。
労組は両省の文書については把握しているとみられるが、今後、いつどう対応するかについては明確な態度を示していない。
対象者 | 自動車業界 |
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日刊自動車新聞2月5日掲載