2025年1月21日
インド自動車市場、EVの品ぞろえ着々と 政府目標に応じて投入拡大 スズキやトヨタはHVも
インドで電気自動車(EV)の品ぞろえが増え始めた。乗用車シェア首位のスズキは、2025年春に同社初となる電気自動車(EV)「eビターラ」を生産する。シェア2位のヒョンデも「クレタ・エレクトリック」を17日開幕の「バーラト・モビリティ・グローバル・エキスポ2025」で披露した。EV比率はまだ2%程度にとどまるが、インド政府は30年までに乗用車のEV比率を3割に高める目標を持つ。スズキやヒョンデはこうした政府目標に呼応し、EVを投入する。
スズキのeビターラはEV世界戦略車の第一弾。鈴木俊宏社長は「EVで他社が先行する中でさまざまな課題が見えてきた。その課題を走行距離や専用車台に落とし込み、顧客ニーズからも学んだ」と現地メディアに語った。航続距離は500㌔㍍以上。ユニットとプラットフォームはトヨタ自動車、ダイハツ工業との共同開発だ。共同開発のプラットフォームについて、鈴木社長は以前「スズキ単独ではできない。ただ単に(トヨタなどから)教わるだけでなくスズキの考え方もしっかりと伝えた」と話していた。eビターラは25年夏ごろから欧州やインド、日本でも順次、発売する。
ヒョンデはクレタ・エレクトリックを179万9千㍓(約326万円)から発売する。EVでは「アイオニック5」をすでに発売しているが、現地生産のEVを投入するのは初めて。小型SUVのクレタ(ガソリン車)は累計110万台を売ったヒョンデの人気車だ。EVモデルではバッテリー容量51.4㌔㍗時(航続距離473㌔㍍)と42㌔㍗時(同390㌔㍍)の2仕様を用意する。
このほか、トヨタはEVコンセプトカー「アーバンBEVコンセプト」を披露したほか、グローバルで販売するEV「bZ4X」も展示した。
二輪では、ホンダが電動二輪車で交換式電池を用いる「ACTIVA e:(アクティバイー)」と充電式の「QC1(キューシーワン)」を披露し価格を発表した。アクティバイーは11万7千㍓(約21万円)、QC1は9万㍓(約16万円)から。同社は30年までに電動二輪車を30車種投入する予定で、高いシェアを誇るインドでもラインアップを増やす。スズキも電動二輪車「e―アクセス」を初公開した。
もっとも、インドでのEVシフトは富裕層や上位中間層が多い主要都市を中心に進みそう。日本貿易振興機構(ジェトロ)などによると、40年には富裕層と上位中間層が7割以上を占める見込みだが30年時点では4割にも満たず、下位中間層と低所得者層が依然として多い。
スズキの鈴木社長は「インドは農村部の発展段階や各地域によって求められる製品が異なり、用途に合った製品を適材適所で投入する」と語る。スズキはハイブリッド車(HV)やCNG(圧縮天然ガス)車を持つことも強みだ。バーラト・モビリティ・グローバル・エキスポではHVも展示した。トヨタも売れ筋の「イノーバハイクロス」などのHVモデルに加え、燃料電池車(FCV)のコンセプトカー「ハイラックスFCEV」もブースに並べ、多様なパワートレインの車両を提案した。
二輪車では、スポーツモデルで販売を伸ばすヤマハ発動機がハイブリッドモーターサイクル「FZ―S Fi」を発表した。電動モデルも投入してさらにシェアを高めていく考え。スズキは二輪車でバイオエタノール燃料対応の「ジクサーSF250」も披露した。
インド政府のEV目標に関しては「政府目標値はかなり高くて達成が難しい」(日本の自動車メーカー幹部)との声も漏れる。それでも成長市場でシェアを伸ばすため、EVを含めたマルチパスウェイ(全方位)でのアピール合戦が続きそうだ。
日刊自動車新聞1月21日掲載