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2025年1月09日

今年の展望は 自動車5団体賀詞交換会でメーカー首脳に聞く

2025年の事業環境や新車市場はどうなるか―。燃料高で日本製ハイブリッド車(HV)が快走する一方、「タリフマン(関税男)」を自称する米トランプ次期大統領を筆頭とする各国の政治体制の変更や経済動向、電動化やソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)競争など先行きは混沌とする。ホンダと日産自動車の経営統合という、変革期を象徴する再編の行方も関心事だ。7日の自動車5団体賀詞交歓会で自動車メーカーや部品メーカーのトップらに展望を聞いた。

自動車5団体による賀詞交歓会(7日、ホテルオークラ東京)

米国の2024年新車販売は5年ぶりに約1600万台に回復した。HVがけん引した格好で、トヨタ自動車やホンダなど日本勢が販売を伸ばした。2025年も堅調な需要が見込まれ、調査会社などの市場予測をみると、2025年も昨年以上の需要が期待できそうだ。

 ただ、トランプ次期米大統領はメキシコやカナダからの輸入品に25%の関税を課す意向を示す。日本やメキシコからの輸出で米国販売を伸ばしてきたマツダの毛籠勝弘社長は「非常に読みにくいものの、実行されれば影響は大きい。とはいえ、対応できることも限られているのだが…」と悩ましげだ。部品メーカーからも「関税がその通りになれば、われわれの北米での利益はほぼ吹き飛ぶ」(豊田合成の齋藤克巳社長)、「突発的に何が起こるか分からないので対応できるような備えは必要だ」(TPRの矢野和美社長兼COO)など懸念や警戒の声があがる。

 もっとも悲観論一辺倒ではない。「内燃機関向けを含めて全方位で手掛けている当社のようなサプライヤーにとっては政策が追い風になる」と話すのはマーレジャパンの木下靖博社長。ホンダの三部敏宏社長も「将来的にEVの需要が拡大していく流れは変わらない」としつつもHVの品ぞろえを増やし、EVシフトへの原資を稼ぐ構えだ。

 新興国市場の行方も気がかりだ。例えば自動車需要が低迷するタイやインドネシア。日野自動車の佐藤直樹専務役員は「回復の見通しは立っていない」と話す。東南アジア諸国連合(ASEAN)市場を主力とする三菱自動車の加藤隆雄社長は「地政学リスクが高まる中、一つの地域にこだわらず、いろいろな所でポートフォリオを組んでいく」とリスク分散の重要性を説く。

 その三菱自も合流する形で、ホンダと日産の経営統合に向けた協議が続く。両社は日産の経営再建を前提に最終的な判断を1月中に決める予定。両社のトップは「議論は進めている。(1月中に方向性を決めるという)予定に変更はない」(ホンダの三部社長)、「ターンアラウンドを含めて形で示すということが一番やらなきゃいけないこと。そこはしっかりと進んでいる」(日産の内田誠社長)とそれぞれ語った。部品メーカーからは「業界再編で競争力が強化されれば喜ばしいこと」(古河電気工業の森平英也社長)との声が出る一方、「競合他社に受注を奪われるリスクになる」「トータルの生産台数が減少すれば当社の売り上げも減少する」と自社への影響を懸念する声も少なくなかった。

 2003年に国営メーカーを買収して自動車事業に参入した比亜迪(BYD)。2024年は約427万台(前年比41%増)を売り、ホンダ、日産の2024年販売を追い抜く公算が大きい。「エンジン技術では追いつけない」という大方の予想を覆し、昨年からプラグインハイブリッド(PHV)で攻勢をかけ始めた。

 7日、2035年に向けた中長期ビジョンを発表した日本自動車工業会の片山正則会長は「日本の自動車産業のかつての競争優位性が大きく揺らいでいる」と危機感を露(あら)わにした。電動化や知能化競争が本格化する中、日本の自動車メーカーや部品メーカーは今後も国際競争力を維持できるか。各社の経営の舵取りが注目される。

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞1月9日掲載