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自動車産業インフォメーション

2024年12月19日

東京海上、ディーラーなど代理店の手数料体系見直し

東京海上日動火災保険は2026年度までに、ディーラーなどの大規模乗合保険代理店への手数料体系を大幅に見直す。双方の協議の上で、代理店が事実上できていなかった業務を同社が引き取り、その分手数料を減らす。同社が支払っている年間約4千億円の手数料のうち、300億円の削減効果があると見込んでいる。損保業界の一連の不祥事では販売力のある代理店に、営業上の配慮から業務の一部を代行する過剰な業務支援を行っているケースもみられた。これを正す。ただ、ディーラー側にとっては収益減につながる見通しだ。

 東京海上日動は「適切な保険募集体制の構築に向けて委託業務の範囲に応じて対価を支払う『保険会社分業モデル』等の新たな仕組み構築の検討を進めている」としている。例えば、保険に入りたい顧客の保険の見積もりや、自動車保険の更新手続きなどをイメージしている。このような業務で、同社が代行した分を代理店への手数料から差し引く。現在も、ごく一部でこのようなやり方を行っているケースはあるが、積極的に展開していなかった。今後は代理店の業務の実態に合わせて契約していく。

 こうした作業は本来、代理店側がやるべきことで損保側はそのために手数料を支払っている。ただ、旧ビッグモーター問題のように大規模乗合保険代理店に対しては、営業上の配慮から業務の一部を肩代わりする慣習があった。これらの肩代わり分を東京海上日動の人件費に換算すると70億円超になるという。同社の営業社員の人件費は約700億円で、その1割に当たる水準だ。

 同社は「顧客(保険契約者)の意向ではなく、代理店独自の理由で選定した損保の商品を提案する『推奨損保制(テリトリー制)』において、さまざまな課題が生じていた」とみている。その上で「代理店から推奨損保に選定されることを目的として過度な代理店業務支援(二重構造)を実施し、代理店の自立した保険募集体制の構築を阻害していたケースがあった」とまとめており、手数料体系の見直しを決断したもよう。

 最大手の東京海上日動の動きは、損保業界に広がる可能性がある。一連の不祥事を受けた保険業法の改正をめぐる政府の議論でも「過剰な業務支援」について、見直す方向が明確になっているためだ。

 しかし、多くの大規模乗合代理店にとっては、手数料収入が減ることになることは避けられない。また、日本損害保険協会(損保協、会長=城田宏明・東京海上日動社長)は9月にまとめたガイドラインで、営業目的による出向の禁止を打ち出した。損保各社はこれに倣う動きで、出向者を受け入れている代理店の業務にも影響が出そうだ。

 こうした流れに、日本自動車販売協会連合会(自販連、加藤敏彦会長)では懸念を示していている。小糸正樹副会長兼専務理事は「引き揚げが急速に進んでおり、すべての出向者を引き揚げる予定の損保もある」と会員各社の現状を明かす。その上で、「(乗合代理店に求められる)比較推奨販売の強化のために、出向者の知見が有用な場合も多々ある」などとして、さまざまな制度の性急な見直しを考え直すよう求めている。

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月19日掲載