2024年12月16日
金融審WG、保険業法改正で報告書案とりまとめ
損害保険業界の一連の不祥事を受け、保険業法等の改正案を議論する金融審議会(首相の諮問機関)ワーキンググループ(WG)の報告書案が最終会合(13日、6回目)でまとまった。大規模乗合代理店の都合による特定損保の商品販売が禁じられたのが大きな目玉となった。また、顧客の意向に沿って、どういう理由でその商品を販売したか、後で検証できるように記録の義務化を金融庁は検討していく。
保険業法の改正案は、2025年1月から始まる通常国会に提出する。それに合わせ、監督指針や施行規則なども変える。
自動車販売会社などの大規模乗合代理店は、店舗ごとに推奨商品を決める「テリトリー制」を採っている社が少なくない。損保側に、出向や修理車の紹介などを競わせるなどした事例もあり、旧ビッグモーター問題で広く知られるようになった。そのため、本来代理店を管理・指導する立場の損保と力関係が逆転し、指導できない状況になっていたため、それをどう変えるのかが金融審の最大のテーマだった。
現在のルール上、代理店都合での商品販売が認められており、これが代理店の力の源泉になっていた。それを禁止することにした。改正金融サービス提供法で、すべての金融事業者に顧客への誠実遂行義務が課され、顧客の意向を最優先にすることになったからだ。
この制度変更による自動車販売店への影響は大きい。WGにオブザーバー参加していた、会員1400社の日本自動車販売協会連合会(自販連、加藤敏彦会長)の小糸正樹副会長兼専務理事は、「特定の損保へのこだわりがなく、『代理店に任せる』といった顧客も多い」として、その場合は「代理店独自の理由で商品を推奨できるようにするなど柔軟な対応にしていくべきだ」と強調していた。
ただ、このような状況だと、代理店都合による販売の実態が続く可能性もある。金融庁は「顧客の意向に沿っての販売が大前提」とした上で、どういう理由でその損保の商品を勧めたかを、後で確認できるようにしておく必要がある」としている。WGの委員からも検証できるように、記録に残すべきだという意見が出ており、報告書にもその趣旨が盛り込まれた。
また、保険業法では、保険会社などが契約者などへの「特別の利益の提供」を禁じている。今回、契約者のグループ企業も対象になった。しかし、旧ビッグモーター問題では多額の販売をする保険代理店に過度な便宜供与をしていて、顧客本位がおろそかになった。特別な利益提供の禁止対象として保険代理店が入らなかったことについて、金融庁は「日本損害保険協会が便宜供与の見直しのガイドラインを作成しているため」とした。それが機能しなかった場合は、保険代理店を禁止対象にすることも検討するという。
カテゴリー | 会議・審議会・委員会,白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞12月16日掲載