2024年12月16日
水素ガスの世界市場、2040年度に58兆円超 富士経済調査
富士経済(菊池弘幸社長、東京都中央区)が実施した水素利用関連の市場調査によると、燃料電池車(FCV)などの燃料に使用する水素ガスの2040年度の世界市場は23年度比30.5%増の58兆1006億円となることが分かった。現在は産業用としての利用が中心となっているが、この傾向は当面続くとみられる。FCVは車両価格の高さや充填インフラなどがネックとなっており、こうした課題が解消していけば、将来的な需要拡大が見込めそうだ。
調査では水素ガスとインフラ9品目と、産業用水素など水素アプリケーション7品目、水素ステーションと関連機器10品目、車載用水素関連機器2品目を対象に実施した。
モビリティ関連では、燃料電池(FC)システムを搭載した車両が主な用途となっている。しかし、現状はFCVの普及が伸び悩んでいる。電気自動車(EV)に比べ、高価格帯であることや、水素ステーションの整備が不十分であることが大きな要因だ。
このため、法人利用が多い商用車での普及が見込まれている。特に、多くの荷物や乗客を乗せて長距離を走るトラックやバスは、航続距離に限りがあるEVよりもFCVの方が、相性が良いとみられている。実際、運輸業界ではヤマト運輸が23年5月、西濃運輸も同6月に、それぞれトヨタ自動車と日野自動車が共同開発したFC大型トラックを用いた実証走行を行った。佐川急便は同11月に、トヨタといすゞ自動車が共同開発したFC小型トラックを導入するなど、実用化への動きが広がっている。
現在、FCVの普及を妨げる一因となっているインフラも、今後拡大が見込まれている。富士経済の調査でも商用水素ステーションの国内市場が、40年度に23年度の約44.7倍となる1653億円になるとみている。フォークリフトなど向けの小型ステーションは同52.2倍の261億円にまで成長すると予測している。
ただ、足元の状況は厳しい。24年度は商用ステーションが同16.2%減の31億円、小型ステーションはほぼ横ばいの5億円と見込む。23年度の国内のFCV販売台数は前年比17.4%増の574台で、電動車全体に占める割合は0.02%にとどまっていることが大きい。24年度も水素ステーションの新規申請件数が減少する見通し。経済産業省は17年に、世界に先駆けて「水素基本戦略」を策定したものの、FCVの普及が思うように広がっていないのが実情だ。
国は30年までに、水素ステーションを1千基整備する計画を打ち出している。水素供給量も40年までに、現状の6倍ほどになる年間1200万㌧に引き上げる。一連の施策が成功し、水素利用の環境が改善していけば、関連市場全体の拡大を見込めそうだ。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞12月16日掲載