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2024年12月02日

ラリージャパン 地域経済貢献で社会的に大きな役割

2024年の世界ラリー選手権(WRC)最終戦「フォーラムエイト・ラリージャパン2024」が11月21~24日の4日間、愛知・岐阜県の5市1町で開催された。期間中は晴天に恵まれたこともあり、総来場者数は54万人を超え前回大会を約4千人上回った。競技区間「SS(スペシャルステージ)」には多くのラリーファンが集結し、移動区間「リエゾン」では地元住民らが沿道から旗を降って応援する姿が見られた。両県で行われるラリージャパンは今回で3回目。自治体の中には120億円を超える経済波及効果も出ている。地域経済への貢献とラリー文化の醸成へ―。ラリージャパンが果たすその社会的役割は、大会を重ねるたびに大きなものになっている。

◇モータースポーツに期待 

「ラリーを通じて幅広い効果が得られると思っている」。豊田市の太田稔彦市長は、ラリージャパンの経済波及効果についてこう話す。豊田市はラリージャパンの共同主催者を務める。自治体がレースイベントの主催者になるケースは珍しく、裏を返せば、それだけモータースポーツに対する期待感が高い証拠と言える。

その1つの指標となるのが経済波及効果だ。今大会の数字は追って公表される見込みだが、前回大会では豊田市だけで約126億3200万円もの効果が生まれた。レース観戦者の消費額とイベント開催に伴う主催者・参加チームによる消費額を合計したもので、宿泊費や交通費、食費、グッズ購入費、お土産代などが含まれる。

豊田市の調査によると、宿泊を伴う観戦者は全体の2割強にとどまるものの、宿泊者の9割強は愛知県外からの来訪だという。太田市長は「ラリーをきっかけに来られた方が初めて見る景色や食べ物など(豊田市の魅力は)色々とある。(そちらへ波及することへの)期待が大きい」と話す。

今大会で豊田市内を走るリエゾン区間には、年に2度咲く四季桜が茂り、秋の紅葉でも有名な「川見四季桜の里」(豊田市川見町堂の洞)、新鮮野菜や焼きたてパン、豊富な山の恵みなどが味わえる「道の駅 どんぐりの里いなぶ」(豊田市武節町)に応援エリアを設定。どんぐりの里いなぶでは、地元産のじゃがいもを使った焼き芋やじゃがバター、炭も串も地元産にこだわった五平餅などを販売し、武節の魅力を存分にアピールした。

一方、岐阜県恵那市では、江戸から明治時代にかけての建物が色濃く残る「岩村本通り」をラリーカーが走行。既存の観光資源とラリーを組み合わせ、地域観光や産業振興につながる取り組みを行った。

豊田市の太田市長は「ラリーツーリズムの可能性は大きい」と断言する。豊田市や恵那市に限らず、SSが設定できる中山間部は少子高齢化や人口減少が深刻化する地域でもある。ラリージャパンによる経済波及効果をいかに最大化するか。それが地域の経済活性化や産業振興につながることになる。

◇親子連れや老夫婦も

ラリージャパンの開催効果は経済的な側面だけにとどまらない。愛知、岐阜両県での開催は3年目を迎え、地域住民の日常生活にラリーが溶け込み、ラリー競技への理解が進む「ラリー文化の醸成」も着実に進んでいる。

ラリー競技は、サーキットで行われるレースと異なり、リエゾン区間では観戦チケットがなくても公道走行中のマシンを間近で見ることができる。それゆえ今年のラリージャパンでも、マシンメンテナンスを行うサービスパークが置かれた豊田スタジアム周辺や近隣地域においては、自転車に乗った中高校生や小さな子どもを連れた親子、犬を散歩している老夫婦などがマシンに手を振る姿が随所で見られた。

一方、今大会では23日に岐阜県恵那市で行われた「SS12(恵那SS)」において、一般車両が競技コース内に進入する妨害行為が発生。主催者が岐阜県恵那警察署に被害届を提出する事態に発展した。

ラリー競技を行うには山道や一般道を長時間封鎖し、多くの交通規制を実施する必要がある。ラリージャパンは28年までの開催が決定しているが、地域住民へのさらなる理解浸透は継続課題であることを改めて浮き彫りにした。

カテゴリー 社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞11月29日掲載