会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2024年11月28日

トラック自動運転「レベル4」 日米で27年実用化へ

商用車の自動運転サービスが2027年に日米で転機を迎える。日本では、いすゞ自動車が自動運転「レベル4(特定条件下における完全自動運転)」での輸送事業を始めるほか、米国でもダイムラートラックや新興のオーロラ・イノベーションなどが相次いでレベル4車両を市場投入する見通し。背景には各国で社会問題化しているドライバー不足がある。一方、事故や雇用への影響を懸念した反対意見も根強い。車両や運営コストも未知数で、普及と収益化は道半ばだ。

ドライバー不足は欧米やアジアなど各国共通の課題だ。日本では残業規制を契機とした「物流の2024年問題」により、輸送能力が30年には今より34%超、不足するとの試算がある。米国では21年ですでにトラックドライバーが8万人不足しており、30年には不足分が16万人超へ倍増する恐れがあるとの見通しを全米トラック協会(ATA)が公表した。23年調査では約6万人に減ったものの、広大な米国内の物流の約7割をトラックが担う構図は変わらない。ATAは「根本的な問題は解決していない」とする。

こうした背景を踏まえ、自動車メーカーからスタートアップまで、さまざまな企業が自動運転車の実用化に向けた技術開発や提携を活発化させている。独ダイムラートラックは27年のレベル4走行トラックの投入を目指し、自動運転技術を手掛ける米トルク・ロボティクスを買収したり、LiDAR(ライダー、レーザースキャナー)メーカーの米エヴァ・テクノロジーズと調達契約を結ぶなど準備を進めている。

日本でも、いすゞが27年度にトラックとバスの双方で事業を始める計画で、ティアフォーなど有力スタートアップ4社とも提携済みだ。三井物産出身の森本成城代表率いるT2(東京都千代田区)も、27年にレベル4での幹線輸送を目指しており、佐川急便などと今秋から実証に入った。

各国政府も法規制を見直すなど環境整備を急ぐ。米運輸省は連邦自動車運輸安全規則の改定案を24年内に公表する予定だ。米ブルームバーグ通信は、トランプ次期政権が自動運転の規制緩和を模索していると21日までに報じた。日本でも昨年4月の道路交通法改正によりレベル4自動運転が解禁されたほか、国土交通省は25年度予算に「自動運転トラックによる幹線輸送実証事業」として3億円超を計上した。路車間設備を備えた「自動運転支援道」の技術開発や整備計画も進んでいる。

一方、米国では自動運転トラックに対する懐疑的な見方がある。自営業の運転手ら15万人超が加盟する米OOIDA(オーナーオペレーター独立ドライバー協会)は「メンバーの多くは安全性、雇用保障、技術コストなどの理由で反対している。非実用的で信頼性が低い」との立場だ。昨年、自動運転タクシーの事故が相次いだカリフォルニア州では、無人の大型自動運転トラックの走行を禁じる法案が議論されている。

トラックメーカーとしても事業の収益化に向けた道筋が立っているとは言い難い。いすゞは、自動運転事業の運行費用をドライバーの人件費相当以内に抑えたい考えだが「ハードルは高い」(南真介社長)という。車両が一定程度、世の中に出ればスケールメリットは見込めるが、本格普及期がいつ訪れ、どの程度の収益を上げられるのか、各社とも明確なシナリオを描けていないのが実情だ。

人手不足の緩和や安全性向上に期待がかかる自動運転トラック。自動停止を含めて重層的な安全対策を施すとはいえ、荷物を満載した大型車が絡むと、重大事故としてメディアの耳目を集めやすいことも確かだ。社会的受容性を育みつつ、事業として採算を確保しながら自動運転トラックをどう普及させていくか、今後の動向が注目される。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞11月26日掲載