子どもたちに整備士を体験してもらう「キッズメカニック」。将来の職業選択のきっかけづくりが目的だったこの催しを、「親子が気軽に楽しめるイベント」として盛り上げようとする動きが広がっている。新たな取り組みが始まった千葉県の事例を紹介する。

ダイハツ千葉(近藤治郎社長、千葉市中央区)は、2024年からキッズメカニックに特化した出張展示会を開始した。新車の販売を目的としたこれまでの出張展示会の在り方を見直し、幼児から小学校低~中学年を対象にしたキッズメカニックがメインのイベントを実施している。

初開催となった9月のキッズメカニックは、市原市のショッピングモール「アリオ市原」が会場。特別な告知をしなかったにもかかわらず、買い物ついでに立ち寄った親子連れの関心は高く、毎時ごとに設けた受け付け枠がほぼ埋まる数の参加があった。

2度目は10月の「白井市ふるさとまつり」での開催。同社と包括連携協定を結ぶ白井市の特別な計らいで実現したキッズメカニックは、ここでも大人気。真っ赤なダイハツつなぎに身を包んだ幼児が女性メカニックらの手ほどきを受けながら、ボンネット内のプラグ点検やタイヤの増し締めなどを体験した。

同社のキッズメカニックは、かわいいつなぎ姿の子どもを自由に撮影できるのも人気の理由。整備体験会でありながら子ども撮影会としても楽しめるのが親にとってはうれしい点だ。同社の担当者はキッズメカニックに特化した展示会の狙いを「将来の担い手づくりという気持ちはもちろんあるが、それよりもキッズメカニックが親子で気軽に参加できて、笑顔になれる楽しいイベントだということを知ってもらいたい」と強調する。

千葉マツダ(大木康正社長、千葉市稲毛区)を中核とする千葉マツダグループ(CMG)が11月17日に開いたファン感謝イベント「CMGラブブランドフェスタ」。キッズメカニックはここでも人気を集めた。

体験コーナーは午前と午後に計30組の枠が設けられた。参加した子どもたちは用意された3台の「ロードスター」のタイヤの溝の深さやエンジンオイルの汚れ具合などをチェック。最後は修了証を受け取って記念写真に収まった。

キッズメカニックを体験中の子どもの動画を熱心に撮影していた千葉市在住の父親は、「子どもが『これやりたい』といってきた。普段は自分から何かしたいと言わない子なので喜んで参加させた」と話した。

同社によれば「キッズメカニックは子ども連れの来場客に楽しんでもらうためには外せないコンテンツ。参加した家族からの評価は高く、指導にあたる若いメカニックの勉強にもなる」という。

クルマに関心を持つ若者が減り、さらにはその若者自体が少子化で加速度的に少なくなる中、整備士不足の危険領域はより広がる。キッズメカニックを開くことだけがその打開策にはならないが、楽しい記憶は時として鮮明に刻まれる。子どもだけでなく、家族が一緒に楽しんだ思い出としてキッズメカニックが残るとすれば、それは意義のあることだろう。