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2024年11月13日

〝働き方改革〟東北で着々 ディーラーでリクルート・定着率に効果

少子高齢化にともなう人口減少によって、業務効率化に向けた〝働き方改革〟への注目が高まっている。このところの東北エリアでは、宮城県庁が2026年度の週休3日制導入に向けて準備に着手など、柔軟な就労形態の検討も進んでいる。ディーラーをはじめとした自動車関連企業では、年間所定休日数の拡大や、一部サービスの合理化など、顧客の理解をもとに従業員の負担を軽減する施策を展開している。

東北6県の自動車販売店協会などに加盟する自動車ディーラーの年間休日を調査したところ、データを公表する101社で年間休日が「120日以上」あるのはメーカー子会社や大規模ディーラーを中心に8社だった。「120日未満110日以上」は42社、「110日未満105日以上」は45社だった。「完全週休2日制」を掲げる企業は3社あった。

休日数が最も多いのは、秋田と山形に拠点を持つ太平興業(平岡裕社長)で125日。同社は22年度、隔週土曜日出勤を完全週休2日制に変更し、休日数を20日増やした。移行にあたっては、平日就業時間の30分延長やサービス工場の作業性見直しとともに、事務業務の属人性を排し誰でも担当できるように改善し、生産性向上を図った。 

同社の採用担当者(秋田県担当)は週休2日制の導入について「企業選びで週休2日制を前提条件とする割合は高い」と説明し、応募者拡大への効果に期待を寄せる。

自動車の販売現場では、これまで主流だった「週1回の店休日に個人・曜日ごとに割り振りした休日を組み合わせて週2日休んでもらう」という休日の形態が変わり始めている。ホンダやスバルといった自動車メーカーの子会社は連続する2日の店休日を設け、個人の休みやすさや予定の立てやすさに配慮した。この流れは、地場系販売会社にも波及している。

山形日産(小関眞一社長)、日産プリンス山形(同)、山形日産販売(同)の山形日産グループ3社は、22年4月から毎月第1日曜日を定休日とした。働き方改革の一環で、社員の家族サービスや各種行事への参加に活用してもらっている。顧客の理解を得ながら、平日にサービス入庫を誘導するなど業務平準化を図り、グループ全体で良好なワークライフバランスを実現している。

トヨタカローラ南岩手(高橋俊雄社長)は、106日だった年間休日数を23年度から120日に増やした。社員数の拡大を図りつつ、月曜の店休をベースに「火曜休み」「水曜休み」の2グループを設定して、交代で休めるようにした。マンパワーの拡充によって、収益を維持しながら余裕のある働き方を実現できたという。

休日数の増加に際しては、社員らの要望を踏まえて「できるだけ連休になるようにしている」と語る経営者がいる。また、コロナ禍の最中、拠点ごとに社員間のフォローアップ体制やチームワークを醸成・強化したことを生かし、従来よりも休みを取りやすい職場環境になったと指摘する管理職もいる。

残業の少ない職場づくりでは、青森トヨタ(小野大介社長)が車両の納車・引き取りサービス(納引き)を取りやめた。現場の負担軽減に向けて、17年から顧客に書簡を送り来店への理解を求めた。その結果、4年ほど前からメカニックの残業がほぼなくなり、営業スタッフの定時退社にもつながっているという。納引き停止後に入社を決めたメカニックの中には「残業がほぼないことが決めてとなった」という人もいる。

「勤務と休日」にメリハリのついた就労環境を整えると、人材確保の効果も期待できる。特に若い世代は、ワークライフバランスを重視する傾向が高いと言われている。働き方改革は、採用強化や定着率改善における重要度が一層高まりそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞11月8日掲載