2024年11月13日
PHV市場に勢い、中国で販売好調 日本も商品力向上
プラグインハイブリッド車(PHV)市場が盛り上がりつつある。中国では販売が息切れした電気自動車(EV)に代わって注目を集め、日本でもトヨタ自動車や三菱自動車、マツダが相次ぎ商品改良したり、新型車を売り出したりしている。ただ、ストロングハイブリッド車(HV)と比べると割高で、使い方により大きく燃費が変わる。普及には低価格化に加え、各国の使用実態に合わせ性能と価格を高次元でバランスさせる必要がありそうだ。
PHVは、高出力モーターを持つストロングHVに外部充電機能を加えた車両を指す。走行時の二酸化炭素(CO2)排出量はEVに劣るが、一定距離ならEVとして走れ、エンジンを搭載しているので航続距離が長く、充電インフラに頼らなくても済む。中国ではEV販売の勢いが鈍る一方、同じ新エネルギー車(NEV)に分類されるPHV販売が伸び、比亜迪(BYD)ら現地メーカーがラインアップを増やしている。欧米勢でも、ボルボ・カーズは2030年の新車販売を100%EVとする計画を撤回し、9割以上をEVとPHVとする方針へと改めた。フォードも今秋、PHVのピックアップトラックを発表。ゼネラル・モーターズもPHVの再導入を検討中だ。
日本では、トヨタが「プリウス」PHVに新グレードを設定した。装備を簡略化して従来から70万円安とし、価格競争力を高めた。三菱自は「アウトランダーPHEV」を商品改良。駆動用電池の容量を1割増やし、EVモード走行距離を約20㌔㍍延ばした。マツダも10月に発売した「CX―80」など「ラージ商品群」4車種にPHVを設定し、海外にも展開する。BMW「M5」や「メルセデスAMG C63」といったプレミアムブランドの高性能モデルも相次いでPHVを採用。世界ラリー選手権(WRC)の競技車両もPHV化されるなど、モータースポーツでも採用が広がる。
PHVは10年代前半に発売されたが、価格の高さや商品説明の難しさから販売が伸び悩み「EVが普及すれば役割を終える」との意見もあった。しかし、EV販売が踊り場に差し掛かり、あらためて注目を集め始めた。アリックス・パートナーズ英オフィスのアンドリュー・ベルグバウム氏は「多くの人が〝過渡期の技術〟と認識していたが、安価で柔軟性があり、今後も使われると思われる」と話す。強制的にEV走行させるモードを加えれば、都市部のZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)規制にも対応できる。
普及には低価格化に加え、商品力を高める必要があるが、電池を多く積めば価格や充電時間で不利になる。各国の使用実態に合わせ、性能とコストをどうバランスさせるかがカギになりそうだ。マツダの毛籠勝弘社長は「北米のユーザーには特に合っていると思うが、今は(台数が)あまり多くない。『またPHVに乗りたい』と言ってくれる方がどれだけ出てくるかだ」と語った。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 一般,自動車業界 |
日刊自動車新聞10月30日掲載