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2024年11月08日

災害時、広がる電動車の活躍 自動車メーカーはアプリで配車支援

災害時に電動車を活用する仕組みが進化している。自動車メーカー・販売会社と自治体が結ぶ災害協力協定に、人工呼吸器や信号機への給電といった用途を追記する動きや、停電を想定して電動車オーナーの登録制度を設ける自治体が出始めた。自動車メーカー側は専用アプリなどで配車を側面支援する一方「給電機能を認識している人は全体の3~4割の印象」(日産自動車)として、給電機能のPRに力を入れる。

2018年から電気自動車(EV)を活用した地域課題解決プロジェクト「ブルー・スイッチ」を始めた日産の場合、台風15号(19年)による大規模停電に見舞われた千葉県に「リーフ」53台を提供したことが注目され、協定が広がった。三菱自動車も熊本地震(16年)や西日本豪雨(18年)の被災地に「アウトランダーPHEV」を派遣。自治体からの要望を踏まえ、19年から災害協力協定を本格的に結び始めた。今年10月末時点で日産は267件、三菱自動車は257件の協定を締結済みだ。トヨタ自動車の場合は販社が主体のため、正確な協定数は把握していないという。

一般に避難所へと配車された電動車は、スマートフォンの充電や冷蔵庫などの電源として用いる事例が多かった。しかし、最近は用途を広げる自治体が増えている。三菱自と9月に協定を結んだ大阪市では、難病や小児慢性特定疾病患者の人工呼吸器などの電源に活用することを協定で明記した。プラグインハイブリッド車(PHV)1台当たり1千台分の人工呼吸器用バッテリーを充電できる。三菱自は、すでに協定を結ぶ川崎市とも人工呼吸器用バッテリー充電の検証を終えた。

また、協定ではないが、三菱自製のPHVを29台、入札で調達した滋賀県警察本部は、停電時の信号機への電源供給に役立てる計画を立てている。トヨタ系販社の一部では、停電時に電動車を派遣して信号機に電力を供給する協定を地元警察署と結ぶ。

災害を想定し、地域にある電動車の活用策を練る自治体も出始めた。千葉県や栃木県、東京都練馬区などでは、電動車を購入した住民に対し、災害時に車両を提供してもらう登録制度を設けた。名古屋市は、電動車の購入補助金を支給する条件にこうした規定を盛り込んだ。

ただ、災害時の混乱の中で、協定に基づく配車がスムーズにいくとは限らない。今も発災時に自動車メーカーや販売店側から電動車が配車可能なことを自治体に〝プッシュ通知〟しているが、さらに一歩踏み込み、協定を結ぶ自治体向けのアプリも提供し始めた。トヨタの電動車マッチングシステムは、自治体の担当者が電動車を必要とする「場所」「時間」「台数」を入力すると、販売店に支援依頼が届く仕組み。現在、豊田市などでの実証を終え、展開を検討中だ。日産の配車支援アプリは、自治体の災害対策本部が立ち上がると、事前登録されたEVの所有者や自治体の公用車担当に派遣要請が届く。EVの電池残量や位置などを踏まえ、避難所に派遣可能な車両も迅速に把握できる。

日産の高橋雄一郎・日本事業広報渉外部長は「いろいろなところにEVが使えるということが浸透していないのは課題だ」と話す。各社は販売会社とも連携し、給電のデモンストレーションを実施したり、商談時に機能を丁寧に説明するなど、粘り強く給電機能をPRしていく考えだ。

カテゴリー 社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞11月6日掲載