2024年11月07日
自動車メーカーで広がるアルムナイ採用制度設計 再入社人材は貴重な即戦力
自動車メーカーで「アルムナイ(卒業生)採用」の制度を設計する動きが広がっている。ホンダは、企業情報を入手できる専用サイトを立ち上げるとともに、一次面接をスキップできるアルムナイ専用の採用プロセスを構築し、運用を開始した。トヨタも現役社員と退職者が交流するオンラインコミュニティーを立ち上げたほか、マツダも制度導入を検討中だ。人材の流動性が高まる中、退職者の受け入れ体制を整備し、企業文化や業務に精通しながら別企業や異業種などでキャリアを積んだ即戦力を確保する狙いだ。
ホンダにはもともと配偶者の転勤などやむを得ない理由で退職する社員がその事由が解消した際に再び元の職場に復帰できる「再入社チャレンジ制度」という仕組みがある。加えて新たに、退職理由を問わず再入社を希望する人のための仕組み「ホンダアルムナイネットワーク」を作った。ステップアップなどで退職した元社員がキャリア採用として応募した場合に再び雇用する事例は従来もあったが、仕組みとして整備することで退職者の再入社を促す。
具体的には、退職者が登録できる専用サイトを立ち上げ、ホンダ社員との接点を提供するイベントの情報やホンダ社員のインタビュー記事などを発信する。また、事前の面談を行えば、1次面接をスキップし、最終面接に進める専用の選考プロセスもつくった。退職後の職歴や年齢の制限は設けない。
自動車業界ではトヨタ自動車が2023年7月に退職者と現役社員の交流を目的としたサイトを開設した。オンラインコミュニティーに加え、リアルでの交流会も実施し、再入社しやすい風土の醸成に取り組んでいる。
総務省の「労働力調査」によると、23年の転職希望者数は前年比39万人増の1007万人となり、7年連続で増加し、初めて1千万人を超えた。実態としては必ずしも転職者が増えている訳ではないものの、就業観の変化などを背景に人材の流動性は高まりつつある。電動化や知能化で多様な人材を確保する必要性が増す自動車業界では、今後も自社と他社の経験を併せ持つアルムナイの採用に向けた動きが広がりを見せそうだ。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 一般,自動車業界 |
日刊自動車新聞11月2日掲載