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2018年2月6日

現場アイデア あの手この手 府中刑務所晴見自動車整備工場(東京都府中市)

全国の一部の刑務所には一般の車を受け入れている自動車整備工場があり、府中刑務所晴見自動車整備工場(東京都府中市)もその一つだ。整備作業は受刑者が行っている。
同工場の歴史は古く、設置は1951年。当時は旧小菅刑務所(同葛飾区)にあった。53年に認証工場、61年に指定工場となった。府中への移転は69年で、刑務所施設の全体改築(93年)を機に現在地に移った。今では年間、一般市民の乗用車やオートバイ、刑務所車両(トラック、バン)約150台の車検をこなすほか、点検整備、板金塗装などを手掛けている。
職業訓練ができる分教場の指定も受けており、現在(1月10日時点)、訓練生として3級整備士資格取得希望者5人と2級希望者1人、さらに資格取得済みの人を含む20~30人の受刑者が、整備士資格を持つ伊藤泰道作業専門官らの技術指導の下、平日ほぼ毎日作業を行っている。
刑務所内という特殊な条件下にある工場のため、一般的な整備工場と異なる決まり事も多い。入庫時、車内に荷物や現金、たばこなどが残されていないか刑務所職員が徹底的にチェックする。また、工具の紛失は許されないため、作業開始と終了時に数と種類を厳重に確認する。容易に確認できるよう、工具の型をくりぬいたスポンジ状の収納スペースを使い、作業終了時にはめ込む形で収納する。
利用者が料金を支払う際は現金のみとなり、カードなどは利用できない。
一般的な乗用車の車検は早ければ1日、それも数時間程度で終了するが、同工場は入庫から作業終了まで5日程度を必要とする。このため、納期が厳しい法人の車は受け付けない。
同工場は「矯正施設内の職業訓練」のため、利潤を追求する一般の工場とは目的が異なる。そのため、利用者の立場からは不便な面も目に付く。それでも、技術の確かさと丁寧な作業の評価は高い。民業圧迫を避けるため積極的なPRをしていないにもかかわらず、口コミを中心に根強い人気を保っており、リピーターも多いという。
受刑者の出所後の生活基盤確保のため、刑務所も受刑者の資格取得を重視する。3級向けの講義は伊藤専門官が、2級向けは外部講師が適宜工場内の教室で行っている。年1回の登録試験は東京都自動車整備振興会の担当者の派遣を受け、工場内で実施している。
同刑務所の高杉春之調査官は「出所後、仕事に就けた者とそうではない者の再犯率は大きく違う」と就労の重要性を強調する。伊藤専門官も「コレワーク(矯正就労支援情報センター)の利用を検討していただきたい。しっかりとした資格と技術を身に付けた人もいるので、(出所者の雇用に協力する)『協力雇用主』として雇用を検討してほしい」と整備業界に呼びかけている。

日刊自動車新聞2月6日掲載

カテゴリー 交通安全,社会貢献
主催者

府中刑務所晴見自動車整備工場

対象者 自動車業界

施 設 名:府中刑務所
代表者名:角田康彦所長
所 在 地:東京都府中市晴見町4―10
TEL:042―362―3101(代表)
URL:(法務省施設案内・府中刑務所)
http://www.moj.go.jp/KYOUSEI/KEIMUSAGYO/sagyo/sisetu_fuchu.html

【記者の目】

「2017年版犯罪白書」によると、協力雇用主(1万8555社)のうち、実際に出所者を雇用したのは774社(4・2%)にとどまった。一方で、整備業界は人手不足に苦しんでいる。刑務所内で資格を取った人は研修をやり遂げ、一定水準以上の技術を持っている。雇用した事業者には奨励金支給などの優遇措置もある。雇用を検討する価値はあると思う。