2024年10月30日
国際エネルギー機関年次報告 EV・PHV世界市場、30年までに年4千万台
国際エネルギー機関(IEA)は、世界のエネルギー市場に関する年次報告「エネルギーアウトルック2024」を公表した。電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の市場規模は2030年までに年間で約4千万台以上に増えるとの見通しを示した。米国の政策変更などによる下振れリスクにも言及しつつ「長期的にEVに移行するトレンドは変わらない」とした。35年にEVの車両コストがハイブリッド車(HV)を下回るとの試算も公表した。
各国政府が公表した政策や目標をもとにしたシナリオ(STEPS)で30年には4千万台以上、35年に6千万台近くにEVとPHVの市場規模が拡大し、新車市場に占める構成比がそれぞれ45%、55%に高まると試算した。23年の市場規模は1400万台。保有ベースのEVとPHVの比率は30年までに15%以上になると見込む。この結果、30年時点で1日当たり600万 バレル (1 バレル =約159㍑)以上の石油需要が抑制されるとした。
EVとPHVの販売は、現在でも全体の6割を占める中国市場に加え、中国以外の新興国が市場拡大をけん引する。中国から新興国へのEV輸出も市場形成の一因になるとした。電池価格の低減も需要の拡大要因に挙げた。
一方、30年に45%とするEVとPHVの市場構成比は、約35~50%の間で変動する可能性もあるとした。今回の予測は、米国の次期排出ガス規制の実施が前提だ。政策変更があった場合、予測は大きく下振れするとした。
EV以上のペースで市場が拡大し始めたPHVについては「短期的に重要な役割を果たす」とした半面「将来的にはより手頃な価格のEVが普及し、30年以降に販売が急減する可能性が高い」とした。電池技術の進化と充電インフラの整備により、EV特有の航続距離への不安が緩和されるという。
報告書では、EVとHVの車両コストも試算しており、前年の報告書から予測を修正した。前年版は30年に1万6600㌦になるとていたEVのコストを1万5800㌦へと見直した。30年時点ではHVも原価低減が一段と進み、1万5100㌦と価格優位性があるが、今回の報告書で追加した35年時点の予測ではEVが1万4700㌦、HVが1万5千㌦とEVが優位に立つと予測した。
報告書はまた、石油や石炭など化石燃料の需要は30年までにピークを迎えると予測。一方、EVやデータセンター需要などで電力消費が大幅に増え、エネルギーの主体が電力に移行するとした。電力需要に占める再生可能エネルギーの比率については30年代半ばに40%を超えるとみる。ただ、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を実現するためには、各国がさらに再エネ投資を進める必要があるとした。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞10月28日掲載