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2024年10月18日

「JMSビズウィーク」 サプライヤー各社、スタートアップに熱視線

「ジャパンモビリティショー(JMS)ビズウィーク」(幕張メッセ)では、サプライヤー各社が協業先を求め、スタートアップなど新興勢に熱い視線を送る。今回のJMSでは初の試みとして、自動車業界とスタートアップとのマッチングを促す仕掛けを用意した。ソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)に欠かせないソフトや人工知能(AI)領域でのオープンイノベーションを見越した企画だ。「CEATEC(シーテック)2024」(電子情報技術産業協会主催)との併催ということもあり、従来は接点の少なかった業界との〝化学反応〟も期待される。

ブリヂストンは、タイヤ管理サービスを一括提供する「トータルパッケージプラン(TPP)」での協業を見込む。特に空気圧モニタリングなどTPPのサービス拡充に関する提案や、タイヤ販売店の業務効率化に役立つ新技術などの提案を募る。担当者は「従来は売り切り型ビジネスで自社で完結していたが、サービスを売る事業にシフトするには自前主義では限界がある」と理由を説明する。

フタバ産業は、開発中のレーザー除草機を展示した。画像認識で野菜と雑草を識別し、雑草だけ除去するもので、主に農家などへの販売を見込む。JMSでは販売戦略を託せるスタートアップを求めている。B2B(企業間取引)に慣れ親しんだ自動車部品メーカーにとってB2C(消費者向け取引)はハードルが高い。レンタルやリース、サブスクリプション(定額利用)を含め「B2Cの販売戦略に長けた企業の提案に期待する」(同社)という。

しげる工業(正田敦郎社長、群馬県太田市)はインストルメントパネルやドアトリムなど内装部品を手がける中、次世代コックピットや車室空間開発で不可欠なヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)と、内装部品の製造過程で出る端材のアップサイクルでパートナーを募る。HMI分野では、センシング技術を持つスタートアップの協業先候補を見つけた。担当者は「自動車分野の経験が邪魔をして斬新な発想が出てこない面もある。全く新しいパートナーと手を組み、全く新しい車室空間を生み出すのも手だ」と語った。アップサイクルでは、端材に東海理化のシートベルトの端材を組み合わせたトートバックなどを発売した実績もある。今後も、中堅や大手も含め連携先を探る考えだ。

特装車などを手掛けるトノックス(殿内崇生社長、神奈川県平塚市)は、AIに強みを持つスタートアップに関心を寄せるが、JMSでは逆に、災害用トイレを手がけるスタートアップが「トイレカーを作りたい」と同社に相談を寄せた。「防災庁」構想をはじめ災害対策が改めて注目される中、同社担当者も「トイレカーや電源車などに取り組みたい」と語った。

オープンイノベーションを重視する姿勢は海外勢も共通だ。ボッシュ(クリスチャン・メッカー社長、横浜市都筑区)はスタートアップ向けのプログラムを紹介。新たな協業先候補として複数の企業を見つけた。ヴァレオジャパン(アリ・オードバディ社長、東京都渋谷区)もイノベーションを目指して今年新設したセンターを紹介するなど「スタートアップらとエコシステム(生態系)を構築することを目指す」(同社)。

米スタートアップのセプトン社と車載用LiDAR(ライダー、レーザースキャナー)の開発に取り組む小糸製作所は、主に自社製品の新たな使い方につながったり、新規事業の探索を支援する企業などを探し、複数のスタートアップとの面談を決めた。担当者は「プロジェクトにつなげたい。当社も意思決定を早くする必要がある」と意気込んだ。スタートアップをハブ(軸)に他企業との関係構築も探っていくという。

太平洋工業は、既存と新規の両事業で協業先を募る。既存事業では、工場の自動化や検査工程のAI活用技術などを持つスタートアップが主なターゲットだ。4日間で20社以上と意見を交わした。担当者は「伺ったアイデア自体は想定したものが多いが、スピード感は魅力だ」と話した。

シーテックを視察した日本自動車工業会の片山正則会長は「われわれが思いつかないような技術があった」と語った。自動車部品メーカーからも「異業種の企業と交流が増えるのは良い。産官学のブースなどとも交流が広がるとなお良い」(しげる工業)、「今年は『連携しよう』という気持ちが来場者も含めて一段と強いと感じる」(小糸製作所)といった声が聞かれた。シーテックやJMSのような展示会の役割も時代に応じ、多様化しているようだ。

カテゴリー 展示会・講演会
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞10月18日掲載