2024年9月24日
踊り場の市販ドライブレコーダー市場 プラスアルファ機能に活路
社会問題化したあおり運転に加え、危険運転など運転中の万が一のトラブルに備えるアイテムとして普及が進んだドライブレコーダーだが、市販市場では踊り場を迎えている。電子情報技術産業協会(JEITA)によると、2023年度の出荷台数は前年比24.1%減の323万3034台となり、2年連続で前年を下回った。自動車用品小売業協会(APARA、小林喜夫巳会長)も、足元の売上高が「低調に推移している」と評価している。こうした中、メーカー各社は駐車中の監視や災害発生にも対応した製品を投入するなど、競合他社と差別化を急ぐことでシェア確保に力を入れている。
さまざまな交通トラブルの証拠映像として報道されるなど、有用性が広く認知されたドライブレコーダーは、市販市場でも稼ぎ頭だった。事実、JEITAの統計でも16年度以降、出荷台数は増加傾向にあった。ただ、21年度の同16.9%増の537万6513台をピークに、前年実績から20%超ものペースで落ち込みが続く。24年4~6月期も前年同期比3.0%減の71万82台と、マイナス傾向に変わりはない。APARAの統計でも、7月のドライブレコーダーを含むカーエレクトロニクス製品の売上高が前年同月比5.9%減となっている。
この要因として、業界関係者の多くは、あおり運転や危険運転をきっかけにした特需が一巡したとの見方をしている。JEITAの16~23年度の出荷台数を単純合算すると、3千万台を超える。保有台数の4割弱に装着されているレベルであり、必要としているユーザーはすでに購入しているケースが多いとみられ、市場拡大のペースにブレーキがかかっているようだ。
そこで、メーカー各社は本来の録画機能の高性能化だけではなく、プラスアルファの安心や安全につながる機能を盛り込む動きが出ている。この一つが、駐車時の車両監視機能を搭載したモデルで、ラインアップも増えている。人気車種ではいまだ車両盗難の被害が少なくない。これに関連する報道も多いことから、防犯意識を高めているユーザーも目立つ。駐車中でも愛車を守る手段としてもアピールすることで、ドライブレコーダーの販売増につなげる狙いだ。さらなる差別化のため、監視精度の向上やエンジン停止状態での長時間録画などの機能進化にも取り組んでいる。
また、ここ数年、頻発している自然災害に対応した製品も登場している。人工衛星経由で気象庁が出す災害発生時の情報を受信することが可能。発災時に、乗員の身を守れるアイテムとしてのニーズも吸収できそうだ。
需要が一巡したとはいえ、今後は古いモデルからの交換需要が発生する可能性も考えられる。そうした需要を取り込むためにも、競合モデルにはない機能をいかに開発し続けられるかが、各社の成長戦略の鍵を握るとみられる。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 一般,自動車業界 |
日刊自動車新聞9月21日掲載