会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2024年9月19日

トヨタカローラ鹿児島 オンデマンド交通展開、持続可能な地域の足を提供

トヨタカローラ鹿児島(中村博之社長、鹿児島市)は、県内3自治体と協力し、オンデマンド交通を推進している。地域公共交通の維持を目指し、移動手段の選択肢の一つとして運用している。8月には県内自治体の交通政策担当者を招き、シンポジウムを初開催するなど、地域とともに持続可能な公共交通の実現に向けて取り組みを活発に展開している。

オンデマンド交通は、2020年7月に志布志市の実証実験からスタートした。運用では、アイシンの「チョイソコ」を活用する。九州で新車ディーラーがチョイソコの運営母体を務めるのは初めてで、地域との連携を重視して事業を展開してきた。そして志布志市では、22年10月から本格運行に移行した。

23年11月には鹿児島市と霧島市でも実証実験を実施。霧島市では今年10月から本格運行への移行を予定する。また、鹿児島市では10月1日から12月30日まで第2期実証実験を行い、オンデマンド交通の可能性をさらに探る計画だ。

「チョイソコしぶし」の本格運行から2年近くが経過した志布志市では、チョイソコの会員数が市の人口の5%近い約1400人になった。車両2台体制で市内全域をカバーする。会員の約8割が高齢者で、通院や介護サービス利用時の移動など、高齢者福祉に貢献している。

同市総合政策課の川上桂一郎課長は「公共交通は行政の絶対条件」と話し、既存の公共交通ではフォロー困難なエリアを含め、チョイソコを活用し地域の移動手段の確保に努めているという。

10月に本格運行を控える霧島市では「きりしまMワゴン」というオリジナル名称でサービスを提供。現在、会員数は約1600人で、中心街地と溝部地区を車両2台でカバーする。会員の年齢層は幅広く、高齢者の割合は5割程度だ。小学生が習い事に通う際に利用するなど、子育て世代の支援にも役立っている。利用しやすい環境の整備も進めており、志布志市と同様に予約は専用コールセンターおよびウェブ経由に加えて、オリジナルのスマホアプリからも可能にした。

両市では安定したサービスを提供するため、スポンサー制度を導入。病院や商業施設など、志布志市では20数社、霧島市では40数社の協力を得た。霧島市の企画部地域政策課交通政策グループの美坂雅俊グループ長は、スポンサー制度について「例えば病院では従来タクシーで通院していた患者さんのためになると、好意的に受け止められている。Mワゴンの『M』はみんなのワゴンだ」と、新サービスを地域で支えることに、地元企業の理解が広がっているとした。

8月のシンポジウムには、県内20自治体が参加。オンデマンド交通で先行する3自治体の交通政策担当者らが登壇し、パネルディスカッションなどを通して運行情報の提供や課題の議論を行った。

その中では、実際の運行状況を踏まえ、オンデマンド交通には従来のコミュニティーバスなどとは異なる評価指標が必要なことが確認された。コミュニティーバスで重視される乗り合い率がオンデマンド交通では低い傾向にあり、個別乗車が主流である点などだ。オンデマンド交通の柔軟な運行形態がそうした利用状況を生んでいると見られる。

この運行状況を受け、カローラ鹿児島新規事業部の神之田哲也担当部長は「運行車両の選定では、当初は7、8人乗りを想定していた。運行エリアや需要を考慮した上で、もう少し小型な車両でも良いかもしれない」と指摘する。

公共交通の事情は地域によって異なるが、シンポジウム後に参加したある自治体から早速相談があったという。神之田担当部長は、オンデマンド交通が「既存の公共交通機関と組み合わせて、ファーストワンマイルおよびラストワンマイルを確保することに貢献できる」と語る。同社では今後も自治体や地域の公共交通事業者、企業との連携を広げながら、持続可能な移動サービスの実現を目指す考えだ。

カテゴリー 社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞9月13日掲載