2024年9月18日
工場・倉庫向け屋外搬送モビリティ 自動車技術で性能向上、人手不足解消支援
自動車業界で、工場や倉庫で活用する屋外向けの搬送モビリティに注力する動きが広がっている。スズキは電動車いすの足回りを活用し、搬送車両のベースを開発。ヤマハ発動機とティアフォーの共同出資会社・イブオートノミー(星野亮介CEO、静岡県磐田市)はヤマハ発のゴルフカートを応用して無人自動けん引車を手掛けた。物流倉庫や工場、農業など、人手不足が深刻化する現場の課題解決に役立ててもらう考えだ。
製造業や物流業では人手確保の厳しさが増し、業務の自動化に取り組む動きが進んでいる。ただ、現在流通している自動搬送車(AGV)は屋内での活用を想定した製品が多い。AGVはキャスターのような車輪を活用しており、凹凸のある屋外の路面を走行することが難しい。足回りの知見が少ないAGVメーカーは「屋外で活用するAGVをやりたくてもできる技術がない」(スズキの担当者)状況だという。
スズキが工場や農業などでの搬送ロボット用の足回りとして提案する「電動モビリティベースユニット」は電動車いすと同様の部品を活用し、サスペンションや電動パワーステアリングといった技術を生かす。最大積載量は100㌔㌘で、5㌢㍍の段差も楽々と越えられる。
現時点では試作段階だが、数年以内の実用化を見据えて改良を重ねる。現在は電動車いすの部品を転用しているが、将来的にはブラシ付きモーターをブラシレスモーターにするなど部品を刷新して商品化する計画だ。
スズキは試作品を数十社に提供。車両機能などを検証している。今後も顧客ニーズを吸い上げ、車両開発に落とし込み完成度を高めていく。
イブオートノミーが手がける「イブオート」は、ヤマハ発のゴルフカートを30%小型化し、ティアフォーの自動運転システムを搭載したモビリティだ。車両は月額約40万円程度でリース販売するなど金額を抑えて提供しているため、自動運転機能は予測機能を省くなど最低限の機能にとどめている。
同社は2030年に年間200台、売上高は国内と海外でそれぞれ50億円の計100億円以上を目指している。販路の拡大も進めており、従来の代理店だった山善や岡谷鋼機など4社に加え、このほど三菱ロジネクストとも販売の協業を開始。三菱ロジが持つ国内36社・約400拠点の販売ネットワークを活用し、導入企業を増やす考えだ。
搬送の自動化は進むものの、荷物の積み下ろしは人手が介在する。イブオートノミーは作業者の負荷が低減できるように車両の停止位置の精度を上げるなど改良を重ねる。将来的に工場や倉庫での完全自動化に貢献するには、搬送先でのロボットなどとの連携も必要になりそうだ。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
---|---|
対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞9月12日掲載