2024年9月11日
クルマ好き中高生の〝甲子園〟 手作りEV走行「エコ1チャレンジカップ」
「頑張れ、あと少し」「行ける、行ける」-。コースを走るマシンの傍らで激励の声がこだまする。中学生から高校生を対象に、手作りの電気自動車(EV)で走行タイムを競う「エコ1チャレンジカップ」。自動車技術会関東支部と日産自動車、東京都市大学が共催で毎年実施している。東京都多摩市の東急自動車学校の特設コースで開かれ、今年は19チームが参戦し、うち4チームが初参加となった。最高気温が35度を超す猛暑の中、若者らがゴールを目指して力走した。
「エコ1」は1998年から開催している。自動車学校に1周500㍍の特設コースが設置され、各チームは10周の走行タイムを競う。完走扱いとなるにはスタートから30分以内でゴールすることが必要だ。
学生向けにものづくりを題材とした大会では、主に大学生を対象に世界共通のルールで毎年開催される「学生フォーミュラ日本大会」(自動車技術会主催)もある。エコ1は、楽しみながらエネルギーの重要性や、ものづくりの意義を体験することに重きを置いている。毎周止まってドライバーが交代するのも、一人でも多くのチームメンバーに自作したマシンに乗って走ってほしいという思いからだ。
生徒・学生の理系離れへの危惧から大会は始まったが、近年は女子生徒のみのチームの姿も目立つようになった。今年も女子校の静岡雙葉高校が授業内で制作したマシンで参戦した。
日産は大会の意義に賛同し、2019年から主催に名を連ねる。当日は同社やジヤトコなどから80人以上のボランティアが集まり、大会を支えた。
マシンの動力源は、原動機付自転車の始動用などに使われる電圧12㌾以下の鉛蓄電池2つのみだ。一方、車体などの設計は、三輪車からカウルで覆われたフォーミュラカーのような車両まで、さまざまなアプローチでマシンを仕上げている。
中にはインホイールモーターや廃材を集めて制作費用0円でこしらえたチームもある。過去にはコーナリング性能向上を狙いディファレンシャルギアを装備したチームもあったという。
「彼らにとっては甲子園だ」。大会立ち上げ時から携わる東京都市大学理工学部の白木尚人教授はこう話す。大会は毎年8月下旬に開かれる。猛暑対策のため実施時期の変更も一時は検討されたが、夏休みにマシンを制作し、その最後に大会に挑みたいというチーム側の声も寄せられたという。
今回優勝した松本工業高校は、昨年の車両からフレームをアルミ化するなど軽量化。直前の加速用モーターの故障を乗り越えて連覇を果たした。チームリーダーの矢島悠晟さん(3年)は喜びを噛み締め、原動機部顧問の白澤敏宏さん(63)も「『技術屋』としての自信をつけて、日本の工業を背負ってほしい」と生徒をねぎらった。
日産の坂本秀行執行役副社長は「問題が起きたときは何かを知るチャンスだ。クルマにもこだわりや個性が見えてきた」と自身の経験を踏まえ学生らを激励した。
カテゴリー | 展示会・講演会 |
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対象者 | 中高生,自動車業界 |
日刊自動車新聞9月7日掲載