ボッシュ(クラウス・メーダー社長、横浜市都筑区)が建設を進めてきた新社屋と都筑区民文化センター(ボッシュホール)が竣工し、報道関係者らに披露された。電動化やソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)に対応する設備のほか、柔軟な働き方や共創を促す仕掛けも導入した。ボッシュは今年、グローバルでモビリティ事業を再編しており、日本でも新社屋の稼働を機に開発体制を強化する。
新社屋は本社および研究開発機能を備え、東京・横浜エリアに点在していた約2千人の従業員を集約する。同じ敷地内のホールは、ボッシュ・グループとしても世界初となる連携プロジェクトとなる。
同社は、電動化や先進運転支援システム(ADAS)、SDVへの研究開発を強化している。新本社では、地下に「ヘビーラボ」と呼ばれる大型の実験・研究設備を、2~4階には中小規模の「ライトラボ」を設置した。
電動化対応では、自動車の搭載製品の作動音や振動が車両全体にどのように伝わるかテストする半無響室を年内に新設予定だ。電気自動車(EV)やハイブリッド車の普及で静音ニーズが高まっていることに対応する。ADAS機器の開発に必要なレーダーの測定を行う電波暗室も新設した。従来はドイツやハンガリーの拠点にテストを依頼。サンプル受領後、結果報告まで約1カ月かかっていた。
また、車内の通話品質を車載インフォテインメントシステムから調整する「チューニングルーム」も新設した。自動車のネットワーク化に伴い、車内で通話やインフォテインメント操作をハンズフリーで行うことが増え、音声認識が重要になっていることに対応する。従来はメーカー側に出向かないとできなかった作業で、1台の検証を1~2週間で済ませることができる。数カ月以上先まで予約で埋まっているという。
従業員同士のコミュニケーション活発化を目指し、ガラス張りのラボや、あえて仕切りを作らないオープンなラボを業務フロアに隣接した。部署間の連携を促そうと間仕切りのないオープンなオフィスにしてもいる。社長、副社長以外は役員室もないフリーアドレスとした。
約40カ国の従業員が働いていることから、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)を意識したオフィス設計を導入。例えば、全フロアにユニバーサルデザイントイレを設置し、オフィス内に従業員向けの搾乳室や、祈祷(とう)室としても利用できるマルチパーパスルームを設けた。
メーダー社長は「新拠点でパートナー企業との開発強化や、地域と連携しての自動運転の実証などに取り組む。事業部をまたいだ協業が促進され、国内の研究開発体制のさらなる強化を見込む」と語った。