2024年8月26日
中小架装メーカー、新規ビジネス創出へ 輸送ニーズに対応した車両開発
中小架装メーカーが、新規ビジネスの開拓に力を入れている。海外市場や半導体の生産拡大、「2024年問題」への対応など、さまざまな輸送ニーズをにらみ新たな工夫を取り入れた車両の開発が活発化している。さらに、これまで培った架装ノウハウを応用し、ロボットなど異分野参入を模索する動きもある。国内架装市場は安定推移しているが、個々の車両の需要には限りがあるため大きな成長が見込みにくい。各社は持続的な成長を実現するため、新領域に踏み込み収益拡大の基盤確立を目指す。
海外進出をにらむのは、柳沼ボデー工場(柳沼文秀代表、栃木県宇都宮市)だ。2035年を目標に家畜運搬車をオーストラリアやブラジル、欧州などに投入する計画を打ち出した。
同運搬車は参入から3年ほどという新しい事業である。この事業で10年先に海外を目指す理由について、柳沼代表は「国内市場は限られる。資金力のある家畜商が運搬車を買うと、そこで需要が一巡してしまう」と明かす。
同社の家畜運搬車はオールステンレス製で耐久性が高いため、基本的には5年、10年では代替とはならず、乗り換えまでにかなりの年月を要する見通しだ。このためコンスタントに数を出すには、海外展開が不可欠とみて、国内販売が一段落した後に、海外を目指すことにした。すでに日本貿易振興機構(JETRO、石黒憲彦理事長)の支援を受け、輸出関係書類や税制の調査を完了するなど着々と準備を進めている。
平ボデーなどを手がけるウイング(今井一男社長、千葉市若葉区)は「2024年問題」を新たなビジネスチャンスと捉え、2~3㌧トラック用スワップボデーの提案を活発化している。主に戸建て住宅用資材の運搬で利用を想定し、狭路での通行を考慮して小型化した。同社は「このサイズに小型化したスワップボデーの製品化は国内初」と自負する。
スワップボデーには「中継輸送」への対応に加えて、輸送と荷役の分離が容易な特徴を生かしてドライバーの負担軽減が図れるメリットがある。同社は小型化を前面に打ち出し、車体サイズの都合で導入が難しかった現場での活用につなげていく。
平ボデーや家畜運搬車、重機運搬車などが得意な山田車体工業(山田和典社長、静岡県沼津市)は、このところ精密機械運搬車の拡販に力を入れている。国内で半導体の増産投資が活発化したことを商機と捉えて、デリケートな輸送管理を求める半導体装置メーカーなどに売り込む。この車両では27年をめどに、金額ベースで現状の最大2倍、10億円強の売り上げを目指し拡販に取り組む。
異業種参入を視野に入れるのがトノックス(神奈川県平塚市、殿内崇生社長)。殿内社長は「架装業界は大きな成長が望める産業ではないと常に考えている」とし、次の一手を思案中だ。
そのアイデアの一つが、大手不動産会社が物流MaaS(物流・商流データの連携と自動化サービス)を軸に進めている街づくりへの参画。さらに大学との協業によるロボット市場参入も構想している。すでに東京工業大学の協力を得て自律型搬送用ロボットを開発した。運搬の最中に路面状態の調査を可能にしたもので、路面管理のシビアな空港などでの活用を想定する。
日本自動車車体工業会(増井敬二会長)の「会員状況」によると、非量産車製造会社(いわゆる架装メーカー)の売上高合計は、「東京オリンピック」開催にともなう建設・再開発特需がピークを迎えた16~19年度には7500億円前後で推移した。しかし特需の一段落とコロナ禍が重なった20年以降に漸減。22年度には6千億円ほどにとどまり、10年前(13年)のレベルに戻った。
国内市場のパイには限りがあるが、新たな輸送ニーズをいち早く掘り起こしたり、海外に視点を向ければまだ伸びしろを見いだせる。異分野への参入は、新たな収益の柱づくりへの挑戦となる。各社の取り組みは、架装メーカーの次代に向けた成長の礎となるのか。その動向が注目される。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞8月23日掲載