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2024年8月02日

地域をMaaSで活性化 「富山マイルート推進協議会」

富山県でMaaS(サービスとしてのモビリティ)の普及・浸透へ―。トヨタモビリティ富山(TM富山、品川祐一郎社長、富山市)を中心とした「富山my route(マイルート)推進協議会」が、公共交通機関やレンタカー、サイクルシェアなどさまざまな交通手段を組み合わせて快適な移動を提案するモビリティアプリの広報活動を強化している。マイカー文化が根付いた地域ではあるが、MaaSの概念と同時に、自動車以外の交通手段も取り入れることが最適な移動につながることを広め、地方における新たな移動モデルの構築と地域の活性化を目指す考えだ。

同協議会は2021年1月に設立、同年3月にサービスを開始した。協議会にはトヨタモビリティ富山に加え、トヨタカローラ富山(黒澤敏社長)、ネッツトヨタ富山(笹山泰治社長)、トヨタレンタリース富山(品川祐一郎社長)、トヨタモビリティパーツ富山支社(石田貞彰支社長)などの県内トヨタ系企業と富山地方鉄道(中田邦彦社長)などが参加する。

同協議会が普及に取り組むのは、トヨタ自動車とトヨタファイナンシャルサービスが開発・提供するスマートフォンアプリ「マイルート」。さまざまな交通機関を組み合わせて最適な移動を提案することや、観光情報の提供、交通費のオンライン決済が可能なアプリだ。インバウンドの外国人や国内観光客に限らず、県民にもぜひ活用してもらい、富山の魅力を満喫してもらいたいという。

マイルートは全国各地で展開されており、導入事例の多くは公共交通機関の発達した都心部が占めるという。これに対し富山県は、県庁所在地の富山市や県西部の高岡市を除くと公共交通機関が未整備のため、移動の足はマイカーが中心となっている。自家用乗用車の世帯当たり普及台数が1.652台で福井県に次ぐ全国第2位(2023年8月自動車検査登録情報協会調べ)という数字にも、その様子が表れる。

マイカーが生活の足としてしっかりと根を下ろす中で、鉄道やバスでの移動を促すことはなかなか難しい。それだけに、同協議会はサービス開始以来、継続的な広報活動に力を入れている。代表的なケースはイベント出展を通じた露出度の向上で、コロナ禍が落ち着いた23年度から一段と積極化した。

これまでに「とやまレールライフフェスタ」「富山ステーションシティフェスタ」「トヤマチ∞ミライつながるWeekend」「希望の光エール花火」でアピールを実施。さらに、23年11月の「富山マラソン」開催に合わせて鉄道やバスの「1日乗り放題キップ」を半額で提供するキャンペーンも行った。

24年3月には、富山駅を南北に結ぶ自由通路で独自イベント「my routeフェスタ2024~つながるmyステーション+~」を開催。県内最大のターミナル駅で、モビリティや地域貢献にかかわるさまざまな事業者を集め、マイルートの浸透を目指した。

高校生とのコラボレーションも実施した。県立富山北部高校情報デザイン科の生徒と連携して、23年11月に富山市内電車沿線の〝映えスポット〟やカフェを巡るスタンプラリー「野うさぎラリー」を開催し、「公共交通機関の利用者増」「富山の活性化」に取り組んだ。

こうしたさまざまな施策が奏功し、マイルートアプリのダウンロード数、デジタルチケットの販売枚数は着々と増加している。24年度にはダウンロードの累計3万件、DAU(日別利用者数)450件を目標に据えた。公共交通機関の稼働状況や市場のサイズを考慮すると、目標の水準は高レベルという。

同協議会は「県内の大学や専門学校との連携を視野に入れており、新たなアイデアと視点を取り入れながら利用者拡大を図りたい」(岡田貴侍氏)とする。若者の斬新な発想を生かして、マイルートの一層の浸透を目指していく。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞7月19日掲載