2024年8月02日
SDV開発競争本格化 新興EVメーカー先行、ハイブリッド型も登場
スマートフォンのようにソフトを更新することで、性能や機能を高めるソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)の開発競争が、本格化している。SDV化には、これまで個別に電子化が進んだ駆動系や操舵系、コックピット系などを統合制御するE/E(電気/電子)アーキテクチャー(構造)の刷新が不可欠だ。これまで機能ごとに電子制御ユニット(ECU)と制御ソフトを一体開発してきた部品メーカーは、ソフトとハードの分離開発や、機能更新を見越したハード開発といった、新たな対応が求められる。
SDVは、米テスラをはじめ中国の新興電気自動車(EV)メーカーなどが先行している。自動車における電子制御の歴史は半世紀前の排ガス規制対策(燃料噴射制御)にさかのぼるが、その後はボディー、シャシー、コックピット、先進運転支援システム(ADAS)と段階的に電子化されてきた。このため、今の車両は機能ごとにECUと制御ソフトがある。その数は1台当たり50個以上。車載ネットワークを通じ、ある程度の統合制御は可能だが、構造は極めて複雑だ。ある自動車メーカーの首脳は「今のクルマはECUの寄せ集め。(配線で)スパゲッティー状態だ」と話す。
一方、新興メーカーはこうした車づくりのレガシー(遺産)とは無縁なため、中央統合制御による「ゾーンセントラル型」で車両を設計し、開発の手間やECUを減らしたり、無線通信技術「オーバー・ジ・エア(OTA)」で機能追加や性能向上を実現したりしている。テスラは、販売時に装備されていなかった運転支援機能をOTAにより、有料で追加する機能をすでに実装している。
こうした機能追加のためには、あらかじめハードウエアの性能に余裕を持たせる必要もある。ソフトも断続的に更新するようになる。従来のように部品ごとにECUと制御ソフトを一体開発する手法から、それぞれを分離して開発する手法へと転換する必要がある。
ただ、一足飛びにゾーンセントラル型へと移行するには、重層的なサプライチェーン(供給網)を全面的に見直す必要がある。スマートフォンと違ってソフトの不具合は事故に直結しかねず、これまで築き上げてきた車両の信頼性やブランド力が失われてしまう可能性もある。このため、日系メガサプライヤーのデンソーが、既存の車両構造をほぼ踏襲しつつ、SDVの機能を提供する「ハイブリッド型」を提唱するなどの動きも出てきた。
政府が5月にまとめたモビリティDX(デジタル・トランスフォーメーション)戦略案」では、SDV世界市場で日本メーカーのシェアを3割とする目標を打ち出した。異なるアプリケーションやソフト同士が情報をやり取りする際に用いるソフト「API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)」の標準化にも乗り出し、SDVの開発効率や効果を最大化したい考えだ。既存の自動車メーカーと新興勢の勢力争いは、パワートレイン以外でも激化しつつある。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞7月19日掲載