2024年7月18日
国交省 フルフラット可能な高速バス座席、安全対策検討
国土交通省は、シートバック(背もたれ)を大きく倒したり、フルフラットにできる高速バス座席の安全対策を検討する。こうした座席は長距離を走る高速バスで一定のニーズがあり、一部で実際に導入されている。ただ、現行の保安基準は着座姿勢を想定しているため、利用実態に合わせて安全対策を取る必要があると判断した。衝突試験などを経てこうした座席のガイドライン(指針)をまとめ、11月末までに公表することにしている。
国連協定規則(UN-R80)に準拠した長距離バスなど大型車座席に関する現行の衝突時の保安基準は、時速30㌔㍍で前面衝突した時、着座姿勢での頭部、胸部、大腿部の衝撃値を基準としている。利用者がシートバックを最大限に倒したり、フルフラット構造になっていることは想定していない。
国交省によると、過去に行ったフルフラット座席などを利用した場合の衝突実験で、何も対策を取らない場合は①頸部・腹部への衝撃が大きい②3点式シートベルトが頸部にかかる―など、通常の座席とは異なる傷害を受ける懸念があるという。
ただ一方、長時間や夜間での移動が多い高速バスでは、仮眠を取るためフルフラットになったり、シートバックを最大限に倒したいニーズもある。メーカー側もこうしたニーズを踏まえ、フルフラットが可能な座席の開発を進めたり、一部では利用を始めているという。
こうした実情を踏まえ、国交省はフルフラット状態にまでリクライングした座席を模擬した衝突試験(UN-R80の要件を用いたスレッド試験)を実施する。衝突時の乗員挙動や傷害値を分析し、フルフラット座席などで考慮すべき安全対策を検討することにした。
衝突試験に用いるダミーの拘束条件は「2点式腰ベルト」「3点式ベルト」「ベルトなし+周囲転落防止プレート+保護部材」など合わせて6つを設定する。進行方向前向きに座席を設置し、それぞれの拘束条件による衝突試験を実施する。多様な座席配置を想定し、進行方向に対して横方向や後ろ向きに座席を設置した状態で拘束条件を限った衝突試験も行う予定だ。
国交省によると、高速バスなどに用いる座席のリクライニング機構については、UN-R80を参考に各種の傷害値や、衝突事故などの際に乗客がシートベルトから抜けて座席から滑り落ち、前席下部の空間に潜り込む「サブマリン現象」が起きないことを確認し、最大リクライニング角度を143度までにしている、との報告を自動車メーカーから受けているという。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 一般,自動車業界 |
日刊自動車新聞7月18日掲載