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2024年7月12日

自動車業界で広がる「アルムナイ採用」 退社した社員を再雇用

一度退社などした社員を再び雇用する「アルムナイ(卒業生)採用」が、自動車メーカーやサプライヤーなどで広がりを見せている。理系人材を中心に採用難が課題となる中、豊富な業務知識や再雇用による会社への愛着などアルムナイならではのさまざまな効果が期待できる。再雇用の門戸を広げるために専用のコミュニティーを設けるといった事例もあり、アルムナイの獲得に向けた動きは活発になりそうだ。

自動車業界の中では比較的人材獲得に有利な立場にある自動車メーカーでもアルムナイ獲得に動いている。トヨタ自動車は、2022年3月から試験運用していた退職者と現役社員の交流を目的としたサイトを23年7月に開設した。現役社員を含めて約500人が登録しており、情報交換の場として活用を進めている。さらに23年11月にはリアルでの懇親会も開始。退職者との接点を拡充し、再入社を促す狙いだ。

トヨタのほか、マツダも今春、アルムナイ制度の導入に向けた検討を開始した。日産自動車は、明確に制度化している訳ではないものの、「退職者の採用を積極的に行っている」(広報部)と、退職者の採用に意欲を示す。

自動車メーカー以上に人材獲得に苦労しているサプライヤーや素材関連メーカーでは、アルムナイ獲得に向けた積極的な動きが広がっている。三菱重工業は昨年、アルムナイの再採用窓口となる専用サイト「ウェルカムバック採用」を開設した。同社は以前より仕事と家庭の両立支援の観点から、やむを得ない事情で退職した社員を対象とした「キャリア・リターン制度」を導入・運用してきた。

新たに設置した同サイトは、アルムナイメンバーであればいつでも登録することが可能だ。アルムナイに特化したサイトにより、会社情報や求人情報へのアクセスの利便性が向上したといい、採用拡大に期待する。

日立アステモ(竹内弘平社長、東京都千代田区)もアルムナイ採用の取り組みを開始した。以前から、自己都合などで退職した元従業員を採用する例はあったが、採用枠として確立するために新たに制度化した。

一般的にアルムナイ採用の取り組みでは、人材が集う環境を用意して交流を図る方法や、採用に直結するように担当者が付くような方法があるとされる。その中で同社は、100人規模を求人関連の情報発信の対象としてネットワーク化し、採用に直結するような形を目指している。当面、年間数人以上の再雇用を進め、近いうちに2桁規模の採用につなげたい考えだ。

担当者は「一旦退職したり、採用辞退をした方でも、マッチする求人案件があったら相談に乗り、選考に進める形で運用している。退職時より事情が好転したケースなどを広くカバーしたい」と展望する。

ほかにも、ミネベアミツミは、人事・採用関連の部門にアルムナイの担当を置いて対応を強化するほか、沖電気工業(OKI)や原田工業なども取り組みを進めている。

日刊自動車新聞が主要自動車部品メーカーを対象に今春実施したアンケートでは、今春入社の新入社員数が「計画より少ない」と回答した企業が5割超だった。各社ともにIT関連など業界を超えた人材争奪戦が激化し、特に次世代技術の開発に不可欠な理系人材の採用に苦戦している状況だ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞7月12日掲載