会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2024年6月10日

物流「2024年問題」 トラック用品でも業務効率化、運転手負担軽減へ需要

物流業界では現在、「2024年問題」への対応を含め、トラック運転手の働き方改革が急務となっている。ただ、多くの運転手は乗務以外でも、日常点検や洗車といった車両の手入れ、荷室の管理など業務が多岐にわたっているのが実情だ。そこで、カー用品などを手掛けるメーカーでは、こうした付随業務の負担を軽減する用品類の開発を強化している。作業を効率化できる用品類の品ぞろえを増やし、運転手の余暇の拡大を後押ししていく考えだ。

乗務以外で、大多数の運転手が行っている業務が洗車だ。トラックは仕事で使われることから、車体にも運送会社などの社名を表示しているケースが多い。しかし、車両をきれいな状態に保っていなければ、その事業者のイメージダウンにつながる可能性もある。頻繁に洗車するため、運転手に洗車作業を求めている事業者が少なくない。ただ、過密な日程をこなす運転手もいる中、乗務後の洗車を負担に感じる人も増えている。そこで、短時間で洗える洗車用品が人気だ。

例えば、トラック用品などを手掛けるヨシオ(小泉博史社長、東京都足立区)では、薬液を染み込ませたペーパータオルを約15分間車体に貼り付けることで、錆汚れを浮かして取り除ける洗浄剤を発売した。希釈することで、車体以外にも使える汎用性の高さも運転手らに受け入れられている。また、トラック用ホイールを手掛けるハウメット・システムズ・ジャパン(岩本直司代表、東京都千代田区)では、表面に腐食やひび割れを防ぐ特殊なコーティングを施した製品「デュラブライト」を開発。水洗いで容易に汚れが落とせるため、磨き作業時間を従来品に比べて1本当たり20分以上も短くできるとしている。

運行前点検をはじめとする安全確認も、運転手にとっても重要な業務だ。トラックは乗用車などと比べて、車両重量がある。万が一、各部品が正しく機能しなければ、大事故を招く恐れがあるためだ。

ここ最近はホイールの脱落による事故も目立っており、最悪の場合、歩行者を巻き込んだ死傷事故にもなりかねない。そこで丸重運送店(猪飼信子代表、名古屋市中川区)は、ホイールナットの緩みを目視で判断できる「ナットチェッカー」を開発した。隣り合うナットをつなげ、緩んだ場合は形状が変化する。容易かつ適切にナットの状態を把握できるようにし、車両点検の効率アップを実現する。

正しく荷物を届けるには、荷室を適正な状態に管理しておく必要もある。例えば、冷凍車や保冷車では荷室内の仕切りを調節することで、荷物に最適な温度を実現するという。ただ、運転手不足が深刻になる中、体力に限りがある女性や高齢のドライバーに頼るケースも増えている。このため、アジャスト(保谷博代表、東京都東久留米市)では、自社の仕切り製品に軽量の素材を採用。簡単に移動できるようにし、運転手の負担を軽くした。

産業全般で人手不足が解消するめどは立っておらず、今後も物流業は限られた人材の中で、より多くの業務をこなす必要に迫られそう。業務の最前線に立つ、運転手の負荷を減らせる用品類は、引き続き需要が拡大しそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞6月8日掲載