会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2024年5月21日

「日本版ライドシェア」 規制改革推進会議が論点整理たたき台提示

政府の規制改革推進会議は、タクシー事業者以外の企業などによる「ライドシェア」に関する論点整理のたたき台をこのほど作業部会で示した。「ドライバー、乗客の安全」「事故時の責任体制」「ドライバーの働き方の柔軟性、適正な処遇」「全国展開」を主な論点として挙げた。タクシー業界を所管する国土交通省はライドシェア制度の拡充に慎重な姿勢を崩しておらず、議論は曲折が予想される。

国交省は、タクシー事業者の管理のもと、一般ドライバーが自家用車で有償運送できる「自家用車活用事業」を創設し、4月から一部地域で開始した。ただし、タクシー車両が不足している地域、曜日、時間帯に限定して運行を認めている。

こうした〝日本版ライドシェア〟に対し、作業部会に参画する複数の民間委員からは「〝移動の足〟不足という社会問題の解決に対して十分な制度になっているとは言い難い」との指摘があった。これらの委員は、運営主体や運行地域を限定しないライドシェアの解禁を改めて訴えるとともに、新法の検討開始と来年の通常国会での法案提出を目指すべきと主張している。

国交省としては、自家用車活用事業に加え、運用を改めた「自家用有償旅客運送制度」で、まずは地域公共における担い手や移動の足不足の解消を進めていきたい考え。これらの施策は開始して間もないこともあり「実施効果を現時点で評価することは適切ではない」「評価・検証は、丁寧に、十分な時間をかけて行う必要がある」と、早期のライドシェア制度拡充には慎重な姿勢を示している。

また、自家用車活用事業のドライバーに業務委託契約の就労形態を求める意見に対しては「国民全体の働き方に関わる重大な問題として、政府全体で幅広く議論されるべき」と、より慎重な検討を求めた。その上で、移動の足不足対策として現行制度が十分でないことが明らかになった場合は「(鉄道やバスなどあらゆる交通モードを含む)総合的な交通政策の観点から、タクシー事業制度や自家用車活用事業についての見直しが必要なのか、議論を行うべき」とした。

岸田文雄首相は、タクシー事業者以外の参入を認めるかの論点整理を5月中に報告することや、現行制度の効果検証を斉藤鉄夫国交相と河野太郎太郎デジタル相に指示している。規制改革推進会議としては、6月から本格的な議論を始める見通し。一方、交通政策審議会(国交相の諮問機関)の自動車部会は、自家用車活用事業などの施策と今後の地域公共交通政策のあり方について、国交省の主張を踏襲した中間とりまとめを近く公表する。日本版ライドシェアをめぐる着地点はまだ見えない。

カテゴリー 会議・審議会・委員会
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞5月21日掲載