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2024年4月04日

自動車部品メーカー 東北で新拠点や能力増強、BCP対応も視野

自動車部品メーカーが東北地方に事業所を新増設している。小糸製作所や東海理化が新工場を建設するほか、アルプスアルパインは産学連携を進め始めた。東北にはトヨタ自動車の完成車工場や日産自動車のエンジン工場がある。北関東を含めればスバルやホンダの完成車工場もある。また、首都直下や南海トラフなどの大地震に備え、生産拠点を分散する動きも近年は増えているようだ。

東北では、1993年に関東自動車工業が岩手に完成車工場を建てたことを皮切りに、トヨタ自動車東北(98年、宮城に部品工場)、セントラル自動車(11年、宮城に完成車工場)とトヨタグループの進出が続いた。3社は今のトヨタ自動車東日本(TMEJ、石川洋之社長)だ。この間、94年に日産が福島でエンジン工場を操業させている。この結果、東北7県の輸送用機械器具製造業の製品出荷額は02年に1兆円、16年には2兆円を突破した。経済産業省による「東北の自動車関連企業マップ」の掲載事業所数は10年の1125拠点から20年には1055拠点と微減にとどまった。

小糸製作所は約100億円を投じ、東北初の工場を宮城で27年度中に稼働させる。自動車用ヘッドランプやリアコンビネーションランプをそれぞれ年間50万台分、生産する計画だ。東海理化も子会社を通じ、東北初の工場を秋田に建設。25年からアウターミラーやシフトレバーなどをTMEJへ供給する。25年1月の操業時は従業員約50人でスタートするが、29年には2・5倍超の130人まで増やす。

東北地方に生産拠点を設ける理由としてBCP(事業継続計画)対応もあるようだ。首都直下地震や駿河湾から日向灘沖にかけてのプレート境界を震源域とする南海トラフ地震は、今後30年以内の発生確率が70%以上とも言われる。生産拠点を分散することでサプライチェーン(供給網)の途絶を回避する狙いもある。

すでに事業所を持つ部品メーカーも生産能力を増やしている。これまで愛知から部品を供給していた三井屋工業(髙橋直輝社長、愛知県豊田市)は21年に東北工場(山形県米沢市)を新設。今後、さらに約15億円を投じて工場を拡張し、25年央に稼働させる。TDKは、子会社TDKエレクトロニクスファクトリーズ(山本利昭社長、岩手県北上市)が北上工場内に建設していた新生産棟が1月に完成。積層セラミックコンデンサーなどを4月から量産する。 

アルプスアルパインは23年4月に「仙台開発センター(古川)」に新棟を開設した。同社は東北大学のほか、ものづくり産業に携わる企業の振興に向け、七十七銀行と連携協定を結んでいる。泉英男社長は「集結する関係先も増やして共創につなげていきたい」と話す。

東北の主要企業で構成する東北経済連合会(東経連、増子次郎会長)の佐藤健智事業支援部長は「完成車メーカーと系列部品メーカーの集積が進むことで輸送コストの低減、地元企業の技術力向上など、進出のメリットが強まる好循環が生じている。東経連として、今後も好循環を形成していけるように努める」と話す。中部、九州に次ぐ国内の自動車産業集積地として、東北の存在感は確実に高まっているようだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞4月3日掲載