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2024年1月18日

「2024年問題」物流事業者さらなる施策 オーサムエージェント調べ

4月1日以降、トラック運転手の時間外労働に上限規制がかかることで生じる「物流の2024年問題」まで残り時間がわずかとなった。運転手不足による業務への影響を少しでも避けようと、物流事業者では労働条件を改善する動きが加速している。物流向けの求人事業を手掛けるオーサムエージェント(竹村優代表、名古屋市中区)が行った調査でも、運転手の採用拡大に向けて「給与の見直し」(65・2%)、「労働環境の見直し」(57・6%)など、待遇改善に力を入れる事業者が過半数を超えた。それでも、人手不足は解消しておらず、さらなる対策が求められる可能性もある。

同社の調査結果によると、物流事業者の採用活動では「(従業員からの)紹介制度の導入」(48・5%)を行うところが目立った。運転手同士の交流関係を生かすことで、入社する確率の高い人材を集める工夫につなげているもよう。入社後も新たに雇用した従業員の定着に向けて、「定期的な面談」(42・4%)を取り入れるなど、運転手とのコミュニケーションを重視する動きもみられる。

物流事業者が、運転手の働く環境の改善を急ぐ背景には、労働条件の問題が人手不足につながっているとの危機感が強いためだ。調査でも運転手が足りない原因として、「賃金」が最多の71・2%、「労働条件」が68・2%と高いことも、こうした傾向を裏付ける。

さらに、現役の運転手も高齢化が進んでいることも、新規人材の採用への関心が高まる一因となっている。全日本トラック協会(坂本克己会長)によると、2022年に道路貨物運送業に従事する約201万人のうち、50歳以上は48・8%を占めている。ある一定の年齢になれば、離職する運転手が増えるのは間違いない。また、交通事故など万が一のトラブルに遭遇するリスクも高まる懸念もある。

2024年問題で、運転手一人当たりの輸送量の低下が見込まれる中、若い人材を増やさなければこれまで通りの物流量をこなせないことも想定される。実際、調査でも「若年層の業界離れ」(60・6%)を指摘する事業者が多いことが明らかになっている。

多くの物流事業者では、すでに対策に乗り出しているものの、「それでもドライバー不足が実感される」(オーサムエージェント)のが実情だ。さらなる施策を打つには収益力を高める必要もあるが、足元の燃料価格の高騰など、各社を取り巻く環境は厳しくなっているのが実情だ。高まったコストを運賃に転嫁できるよう、荷主への理解を求める声も高まっている。国内のきめ細かな物流網を維持していくためには、物流事業者だけではなく、社会全体で体制を見直していくことも重要になりそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞1月15日掲載