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2023年12月19日

自動車リサイクル 電動重機の導入進む、労働環境も改善

自動車リサイクル事業者で、電動の重機を導入する動きが広がりつつある。使用済み車の解体には容易に車両を持ち上げたり、切断したりして大きな部品を取り外せる「ニブラ」と呼ばれる大型の重機が欠かせない。現在はディーゼルエンジン(DE)で稼働するものが主流だが、将来的に求められるカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)では不利となる。そこで排出ガスを出さない電動の重機に、各事業者が注目している。騒音も出ないことから、労働環境の改善も期待できる。ただ、導入コストは高く、今後こうした課題が解消すれば導入事業者が一気に増えそうだ。

「電動重機の導入はメリットばかりだ」―。リバー(松岡直人社長、東京都墨田区)の浅野晃可執行役員は力を込める。同社は1月、川島事業所(埼玉県川島町)の重機の一部を電動に切り替えた。DEの重機が更新時期だったほか、環境への貢献も考慮して判断したが、「実際に使い始めてから次々と魅力に気付いた」(同)という。1回当たり30~40分ほどかかる給油が不要になったことで、重機の稼働時間が増え、作業の生産性が向上した。

今秋に電動重機を導入したエコアール(石井浩道社長、栃木県足利市)も、環境面だけではなく業務の効率アップにつながる面にも着目しており、将来的にすべての重機を電動化する方針。現在、導入に向けて情報収集を進めている川島商会(川島準一郎社長、神戸市東灘区)も、こうした効果に目を付けており、「ここ1、2年で発注したい」(川島社長)と意気込む。

また、静かで排出ガスを出さない重機を導入することは、工場で働くスタッフの環境改善にもつながる。人手不足で悩む各事業者にとって、自社のアピール材料になる可能性もあり、採用面でのプラス材料にもなりそうだ。

一方、電動の重機の普及には課題もある。その一つがコストだ。リバーの浅野執行役員は「重機本体の価格はDEタイプに比べて1割ほど高く、初期投資として電気の配線工事も必要になる」としている。導入後は給油する必要がなくなるため、燃料代が下がるとみられるが、初期費用はDE車よりも高額になる。中小・小規模の事業者も少なくない中で、慎重な姿勢をみせる企業があるのも実情だ。

また、電動車になると、作業時の操作や取り扱いがDEと差異がある場合も想定される。オペレーターが習熟しないまま作業をすることで、トラブルを誘発する懸念もある。川島商会の川島社長は「不慣れな作業で事故につながらないよう、一気に切り替えるのではなく順次進めていく」ことで、人的なリスクを抑えていく方針だ。

カテゴリー 社会貢献
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月16日掲載