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2023年12月01日

機械振興会館に「くるまコレクション」 自動車図書館閉館で蔵書を移管

機械振興会館(東京都港区)内の図書館「BICライブラリ」に自動車関連書籍を集めた「くるまコレクション」が誕生した。同じ港区内にある日本自動車会館「自動車図書館」が2023年3月に閉館し、蔵書類をBICライブラリが引き継いだ。

■自動車図書館の4万点が移管

自動車図書館は、1970年に自動車工業振興会(現・日本自動車工業会)が集めた資料などを一般公開するために設置されたとされる。開館以降、50年以上にわたり、自動車の専門図書館として研究者やメディア、学生など多くの人々が利用してきた。しかし、2020年に新型コロナウイルスが広まると休館を強いられ、22年には閉館が決定。23年3月末で53年の長い歴史に幕を閉じた。

自動車図書館にあった約4万点もの蔵書類を受け入れたのが機械振興会館のBICライブラリだ。1956年の機械工業振興協会(現・機械振興協会)設立とほぼ同時期に資料部門として設けられた。電気や精密、自動車を含む輸送機器など機械産業に関わる資料を収集している。BICライブラリのウェブサイトによると、収蔵する単行書は約4万冊、逐次刊行物が約1200タイトル、各種団体の報告書は約7千冊にのぼる。

機械産業と自動車製造業の関わりは深い。自工会によると、2021年の全製造業の製造品出荷額など330兆2200億円のうち自動車製造業は56兆3679億円で全体の17・1%を占めた。BICライブラリの蔵書も、もともと大部分が自動車関連の図書で、自動車図書館の蔵書が加わっても違和感はなかった。同図書館の司書は「来館者に提供できる情報が増えることが一番大事だ」と話した。

くるまコレクションは、BICライブラリにある「ディスカッションスペース」を充てて作られた。自動車図書館にあった統計資料や自動車メーカーの社史などが並ぶ。このスペースに収まりきらないカタログ類などは地下の書庫に保管している。

■デジタル化進展するも、教育の基礎は図書館

インターネットやスマートフォンの普及で情報のデジタル化が進む。世間では、本や新聞、雑誌などの「紙離れ」が進むとされる。文部科学省が公表した「令和3年度社会教育統計」では、20年の図書館利用者は17年比21・6%減の4万2374人と減少傾向にある。

ただ、機械振興協会経済研究所の森川正之所長は「図書館は貴重な教育・研究のインフラで、知識・経済にとっても欠かせない存在だ」と語る。

米国での実証では、公共図書館が大きな投資をすると周辺に住む子どもの学力が上がることがわかったという。森川所長は「他国の実証では、図書館を利用すればインターネット利用も増えた。インターネットには欲しい情報がすべて詳しく載っているわけではない」と話す。

日本の基幹産業である自動車に関する蔵書は「経済において貴重なインフラ」(森川所長)だ。BICライブラリは自動車図書館の歴史を引き継ぎ、今後も自動車に関する情報を提供し続ける。

カテゴリー 会議所ニュース,展示会・講演会
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞11月27日掲載