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2023年11月27日

輸入スポーツEVに存在感 インポーター各社、新型車投入急ぐ

輸入車市場で、電気自動車(EV)のスポーツモデルの存在感が高まっている。ポルシェジャパン(フィリップ・フォン・ヴィッツェンドルフ社長、東京都港区)が2020年に発売した「タイカン」は、価格が1千万円超ながら累計販売台数が1千台規模に到達した。マセラティジャパン(木村隆之社長、東京都港区)も今後、新型「グラントゥーリズモ」のEV導入を計画している。

一方、10月にはステランティスジャパン(打越晋社長、東京都港区)が600万円台に抑えた「アバルト500e」を市場投入するなど、足元で価格帯の広がりもみせており、スポーツEVの人気がさらに高まる可能性も出ている。

ポルシェブランド初のEVとなったタイカンは現在、セダンに加え、ワゴンの要素を兼ね備えた「クロスツーリスモ」の2種類の車体形状を用意している。ただ、国内発売当時、日本法人の首脳が「タイカンは真のスポーツカー」と言い切るなど、スポーツ車としてのマーケティングも重視してきた。国内におけるポルシェ車の22年末の保有台数は、約11万台。このうち、約1%がタイカンのため、累計販売台数はすでに1千台を超えているとみられる。市場が限られる高価格帯のスポーツ車の中で一定の評価を得ているようだ。

フォルクスワーゲングループジャパン(VGJ、マティアス・シェーパース社長、愛知県豊橋市)も、アウディ初のEVをSUVとしたものの、第2弾はスポーツモデルとした。21年に発売した「イートロンGT」は車体を4ドアクーペとしたほか、アウディブランドで高性能車を示す「RS」グレードもEVで初設定した。発売当時の国内事業の責任者も「アウディの次世代のアイコンとなるべき特別なモデル」に位置付けており、着実に販売を伸ばしている。

こうしたスポーツEVの市場動向をみて、マセラティジャパンを含め、上級ブランドを抱えるインポーター各社がニューモデルの投入を急いでいる。また、アバルトのように、今後は普及価格帯でもスポーツEVの品ぞろえが増えることも想定される。顧客の選択肢が広がることで、スポーツEVが輸入車の人気カテゴリーの一つに成長することも十分に考えられる。

日本自動車輸入組合(JAIA、上野金太郎理事長)によると、23年度上期(4~9月)の輸入EVの販売台数は前年同期比94・5%増の1万968台だった。前年実績に比べてほぼ倍増するなど、輸入EVの市場自体が急成長している。こうした環境の中で、各ブランドのイメージリーダーとなりやすいスポーツEVが増えていけば、輸入EV市場のさらなる拡大にも貢献しそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞11月25日掲載